東京・青山にあるホンダウエルカムプラザ青山で、凱旋帰国中の佐藤琢磨を囲んでのインディ500ビクトリーファンミーティングが開催され、琢磨とファンが改めて優勝の喜びを分かち合った。
この日のファンミーティングは、朝から会場前で整理券が配布され入場が整理されたのだが、あっという間に440枚の券は配布完了。改めて18時00分に開場すると、あっという間に会場は熱気に包まれた。
また会場内には、インディ500優勝時に飲んだミルクの瓶やブリックヤードに使われている煉瓦も展示。昨日の記者会見同様に、これまで琢磨が使用してきたヘルメットやレーシングスーツも展示された。
そして、18時30分。ステージ上に設けられた大型スクリーンに、エリオ・カストロネベスとの壮絶な一騎打ちを演じたラスト6周のダイジェスト映像が流れると、会場のボルテージは最高潮に。特に残り5周でカストロネベスを抜いたシーンが映し出されると、会場からは拍手が沸き起こり、まるでライブでパブリックビューイングを行なっているかのようなテンションに。チェッカーフラッグではスタンディングオベーションになりそうなくらいの盛り上がりとなった。
興奮が冷めやらなぬまま、イベントがスタートし、今回の主役である琢磨が登場。右手にはインディ500優勝者に贈られる記念のリングもしっかり身につけられていた。
琢磨は、まず会場内を1周し、駆けつけてくれたファンと握手をしたり、時にはサインにも応じたりと、一人一人に「ありがとう!」と感謝の気持ちを伝えに回るかのような丁寧な対応を披露。またファンの皆さんも「おめでとう!」と祝福の言葉を贈っていた。
改めてステージに戻ってきてトークショーが始まって行くのだが、それでも会場からの「おめでとう!」という声援はしばらく鳴り止まなかった。
まず琢磨は「チーム、スポンサー、そしてファンの皆さんの思いと信じ続けてくれ気持ち。これがあってくれたからこそです。本当に感謝の気持ちしかないです。ありがとうございます」とコメント。月曜日に帰国してから、彼がずっと口にしてきた感謝の気持ちを、改めてファンに直接伝えた。
そこからレースのことを振り返り、特にカストロネベスとの攻防戦が繰り広げられた残り6周については、映像とともにどう戦っていたかをファンに説明。これには会場全体が、時間を忘れて彼の話に聞き入っていた。
またインディを勝ってからは、とにかく北米では英雄となり、「翌日から色んなところに連れ回され、本当にノンストップでした。インディの家にこの3週間で3日間ぐらいしか帰っていなかったです」と、当時の状況を思い出しながら語っていた。
しかし、日本人では誰も成し遂げていない大偉業ということもあってか、意外と本人は実感が湧いていないとのこと。「正直、そこまでの実感が湧いていなくて、来年インディ500に出るとしたらチケットに僕の顔が出ていると思うので(笑)その時に、もしかすると本当の実感が湧くのかもしれないですね」とコメント。
それでも、インディ500で勝つというのは究極のアメリカン・ドリームであると、実際に肌で感じた思い、経験を語ってくれた。
「アメリカン・ドリームだなと思いました。モータースポーツはものすごく難しくて、どんな優秀なドライバーでも、クルマが速くなければ速く走ることはできないです。チーム力だったり、一緒にクルマを速くしていく作業が本当に魅力的なんですよね。今回はアンドレッティ・オートスポーツというのは素晴らしいトップチームの支えがあって、初めてできることです」
「インディ500に勝つというのは、別格の別格です。もちろん、勝つために、トップになるためにやっているのだけど、全てが揃っても勝てないレース。夢のまた夢のような話です。でも、本当に不可能ってないなし、信じ続けるって凄いし、夢って本当に叶うんだなと改めて感じました。
「それを可能にしてくれたのは、アメリカン・モータースポーツであり、アメリカン・ドリームです」
「インディカーはモータースポーツの究極のエンターテイメント。レースの楽しさというのはこういうものなんだよ。AJフォイトレーシングで1台体制の中で、ペンスキー、アンドレッティ、ガナッシらの4台体制に立ち向かって勝てたんですよね」
「1台体制でも勝てる、最後尾からでも勝てる。これこそスポーツだなと思いました。だから夢の夢のように感じますが、不可能ではないんです。あそこのグリッドに並んだ33人全員に勝てる可能性をもたせてくれる、勝てそうな気にさせてくれる。それはインディカーの最大の魅力であり、インディ500を勝つことの難しさ。そして勝った時に信じられないくらい周りから讃えられる瞬間なんですよね」
「このレースって、全ての実力、パッケージ、レースのストラテジー、全部が完璧に揃って、なおかつ最後に誰が勝つか?というインディアナポリスのみが知っている、ちょっとした運みたいなのがあります。それを最後に微笑んでもらえたのは嬉しいです」
この他にも紹介しきれないほど、中身の濃いトークショーとなった今回のファンミーティング。今までにもロングビーチで初優勝した時には青山でトークショー等が開催されたが、その時とは違い、これまでのレース人生で学んできたこと、挑戦してきたこと、そこで得られた今回の栄冠。琢磨の本音や夢へのチャレンジ、レースに対する思いが全て語り尽くされたイベントだった。
その後は恒例のプレゼント抽選会が行われた他、会場内のファンと記念撮影。最後にはファンからの寄せ書きフラッグが手渡されると、逆にファンが一斉に「ありがとう!」と琢磨に伝えていた。
最後に、次なる目的であるシリーズチャンピオンに向け、琢磨は「本当にありがとうございました。すごく幸せだし、またこうやって皆で集まれるように、さらに頑張っていきたいと思います。シリーズチャンピオンを狙って後半戦も頑張っていきます。引き続き、応援をよろしくお願いします!」と挨拶。
最後まで拍手と歓声が鳴り止まない、これまでとは違った特別なファンミーティングが終了した。
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Photo:T.Yoshita/KANSENZYUKU
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