【SF】2015第1戦鈴鹿:最終ラップでまさかのトラブル…山本尚貴「残念だけど、これもレース」

©T.Yoshita/KANSENZYUKU

 2015年の全日本選手権スーパーフォーミュラ開幕戦鈴鹿。前日の公式予選でポールポジションを獲得し、優勝が期待されていた山本尚貴(TEAM無限)だったが、最終ラップにまさか結末が待っていた。

 予選ではQ3アタック中の赤旗という不運にも屈することなくポールポジションを獲得。しかしスタートではトヨタエンジン搭載マシン3台を先行させてしまう。昨年までなら挽回ができないままフィニッシュを迎えていたが、今回はパフォーマンスアップしたマシンとエンジンで猛追を開始。2周目に3位を奪い返すとすぐに2位の中嶋一貴(PETRONAS TEAM TOM’S)の背後へ。そこからレース終盤まで2013王者の山本と2014王者の一貴による超ハイレベルなバトルが繰り広げられた。舞台は追い抜きポイントが少ない鈴鹿サーキット。出来る限りギャップを詰めてミスを誘おうとするが、さすがに相手も昨年のシリーズチャンピオン。全く動じないままレース中盤へ。

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 途中のピットストップで先に動いたのはトムス勢。一貴は28周終わりで給油とタイヤ交換を済ませる。この間に自らの作業時間を稼ぐために猛プッシュ。今年から燃料流量の割合が上がったオーバーテイクボタンも使用。出来る限りタイムを稼いでピットに飛び込んできた。チームスタッフも迅速に作業を行なったが、わずかに左フロントタイヤのロックに手間取ってしまう。これが少なからず影響し、タッチの差で逆転は叶わなかった。

 それでもチェッカーまでコース上で決着をつけるという形でチャンスは残っている。「残り周回でタイヤを使い切るつもりで攻めた」という山本は前半スティントにも増して一貴との差を詰めプレッシャーをかけていく。さらにオーバーテイクボタンも5つ全てを使用。出来る限りのことをして何としても並びかけようと攻め切った。

 ところが最終ラップに入った途端にエンジンがパワーダウン。ペースを落としチェッカーを受けることを目指したが、ダンロップを抜けたところで白煙を上げストップした。このまま行けば一貴を追い抜くことは難しかったかもしれないが、彼にとって2013年最終戦以来の表彰台は確実だった。ゴールまで残り半周、まさにチェッカーを受けるまで何が起こるか分からないというレースの厳しさを痛感させられる瞬間だった。

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 「まさかファイナルラップで、あのような形でストップすることになるとは思わず、本当に残念。でもこれもレースですね。最終ラップのメインストレートまでは全く予兆もなく急にパワーがなくなりました。最初はガス欠かと思い、すぐチェッカーを受けることを優先に考えショートシフトなどに切り替えましたが、ダンロップコーナーを抜けたところで白煙が上がりマシンを降りざるを得なくなりました」と、当時のことを振り返ってくれた山本。それよりもスタートが上手く決まらなかったことが彼にとっては悔しいことだったという。

 「昨年からアプローチも変えて、練習も繰り返してきましたが、本番でうまく行かなければ意味がないですね。一貴選手の前で走れていれば、もう少しペースも上げられていたかもしれないので、スタートが決まっていれば違った展開になっていたかもしれません。とにかく次に向けてトラブルの原因究明とスタートの対策に努めていきたいです」とコメントした。なおトラブルの詳しい原因については、エンジンかターボのどちらかという説が大きいと言われているが現在調査中とのこと。

 結果だけをみれば1周遅れ15位完走扱いで0ポイントに終わってしまったが、内容面では間違いなく「もう一人の主役」たった。思い起こせば、昨年は特に鈴鹿でホンダ勢全体が苦戦。山本も第1・7戦ともに予選Q3に進出できず苦しいレース展開を強いられていた。これを教訓にホンダ勢は冬の間にエンジンのパフォーマンス向上に専念。ドライバーが扱いやすいエンジンを目指し2015年スペックを完成。またTEAM無限も車体のパフォーマンス向上に注力。それが予選でのポールポジションに加え、昨年は手も足も出なかったトムス勢を終盤まで追い詰め苦しめ続けるレース運びをみせた。

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 最後に次戦について山本は「正直、鈴鹿ほどのアドバンテージは得られないかもしれないけど、3月のテストでのデータを生かして、しっかりセッティングを煮詰めて臨みたい」と力強くコメント。次回の岡山でこのリベンジを果たしてくれることを期待したい。

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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