2014年のSUPER GT第5戦富士。台風11号の影響で、雨が降りしきる中で決勝レースが行われた。
予想を大きく上回る雨量だったため、お昼にチーム監督を集めて緊急ミーティングが行われ、当初は8分間で行われる直前ウォームアップを20分に増やすことが決められたが、コースオフするマシンも続出。雨量も多くなり途中で赤旗が出された。
さらにレーススタート時刻の15時には、さらに悪天候になるという予報も出ていたこともあってか、安全をとりセーフティーカー先導でスタート。そのまま周回数はカウントされ、3周目に本格的にスタートが切られた。
ポールポジションのNo.17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(金石年弘)がそのまま先行するが、ウエットコンディションに強いミシュランタイヤを履くNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(ロニー・クインタレッリ)が接近。なんどかオーバーテイクを試みるが金石も必死に応戦。しかしクインタレッリが一枚上手で5周目の13コーナーでインに飛び込みトップを奪う。
このまま23号車がリードを広げるのかと思われたが、後方からとんでもない勢いで追い上げるマシンが。昨日の公式予選、今日のフリー走行で抜群の速さをみせていたNo.18 ウイダーモデューロNSX CONCEPT-GT(山本尚貴)だった。スタートでポジションを着実にポジションを上げ、6周目には金石も抜いて2位浮上。そのままクインタレッリにも追いついて8周目に入るところでトップに浮上した。
18号車もミシュランタイヤを装着、そしてウェイトハンデとリストリクター制限で苦しむライバルと比べて軽いハンデも功を奏して、あっという間に後続を引き離しにかかる。ところが、直後に雨が強くなり9周目にセーフティーカーが導入。天候回復を待ったが、逆に悪くなる一方。このため赤旗が提示され、17周を終えたところでレースは一時中断された。相当な豪雨になったため、スタンドにいたファンも屋根があるところへ一時避難する姿もたくさん見られた。
結局、約30分ほどの中断で雨が止み、16時15分から再びセーフティーカー先導でレース再開。20周目にセーフティーカーがピットに入って再スタート。トップの山本は、これまでの苦戦が嘘だったかのような快進撃で一気に後続を突き放していく。レースの折り返しである33周目には2位の23号車クインタレッリに15秒の貯金を築いた。ここで2位の23号車が先に動き、33周終わりでピットイン。クインタレッリから松田にドライバー交替する。難しいコンディションの中で完璧な仕事をやってのけた山本は36周を終えたところでピットイン。マコヴィッキィにバトンを託した。
各車がドライバー交替のためのピット作業を済ませたところで、路面状況が急速に回復。雨もほとんど止み、マシンで舞い上げれた水しぶきが風でとばされ、徐々にハーフウエット状態になっていた。
ここで速さを見せたのがハーフウエットに強いダンロップタイヤを履くNo.32 EPSON NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット)。12位スタートだったが、前半の大祐、後半のバケットと着実に追い上げ45周目に3位に浮上。久しぶりに表彰台圏内に顔を出した。
徐々に乾いていく路面の中でも必死にウエットタイヤを保たせようマネジメントをしながら周回を重ねたマコヴィッキィ。途中GT300車両にひっかかってラップタイムが落ちるシーンがあったが、山本が築いた15秒のリードをきっちり死守していく。
このまま18号車がトップチェッカーかと思われたが、またしてもドラマが待っていた。残り7周で再び強い雨が降り始めセーフティーカーが導入。2人が頑張って築き上げてきた15秒差が一気にゼロになってしまう。もし再スタートが切られれば、ラスト数周のスプリントバトル。ピットにいた18号車の山本、23号車のクインタレッリは祈るような思いでモニターを見つめていた。しかし天候が一向に回復せず、結局セーフティー先導のままでチェッカー。18号車の山本/マコヴィッキィが今季初優勝を飾り、苦戦が続いていたホンダNSX勢にとっては待望の初優勝を成し遂げた。
2位には松田/クインタレッリ組の23号車で今季2度目の表彰台。3位には大祐/バケット組の32号車が入り、2012年最終戦以来の表彰台を獲得した。
レース終了後、パルクフェルメに戻ってきたマコヴィッキィはマシンを降りるやいなやスタッフと抱き合い喜びを爆発。序盤戦は苦戦が続き、険しい表情が多かった山本もこの時ばかりは笑顔だった。
前回SUGOからの規制緩和と今回はランキング上位チームに大きく影響したリストリクター制限で、トップ5のうち3台がNSX勢という快進撃。チームは違ったものの、今まで不得意としてきた富士で予選ポールポジション、決勝優勝を独占してみせた。
『記事:吉田 知弘』
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