今年も見応え満載の決勝となた2014年のル・マン24時間耐久レースを振り返る総集編。第2回目は、トヨタがポールポジションからスタートし、前半のほとんどをトップで進めていった前半戦を振り返っていく。
【序盤から突然の豪雨、アウディ3号車が早くも姿を消す】
昨年はどんよりとした曇り空の中で行われ、レース中に何度も天気が変わる大荒れのレースになったが、今年は週末を通して晴天に恵まれ、決勝も薄曇りの中で始まった。毎年恒例のスタートを合図を告げる、フランス国旗を振る役には、F1ドライバーのフェルナンド・アロンソが務め、54台のマシンがスタートしていく瞬間を見守った。
序盤はポールポジションを勝ち取ったNo.7トヨタTS040 Hybrid(A・ブルツ/S・サラザン/中嶋一貴)が先行、No.8トヨタTS040 Hybrid(A・デビッドソン/N・ラピエール/S・ブエミ)が2位を奪い、今週末のトヨタ勢が早くも先行。一方、予選では苦戦が強いられたアウディ勢だったが、No.2アウディR18 e−トロン クワトロのスタートドライバーを務めたアンドレ・ロッテラーが積極的に順位を上げ、まずはポルシェ勢攻略の突破口を作った。
今年は特にアクシデントもなく順調に始まったル・マンだったが、このまま進んでいかないのが、このレースの恐いところでもある。それまで比較的穏やかだった空が一変。1時間半を過ぎたところで急に雨雲が現れ、ミュルサンヌ・ストレート(旧ユノディエール)を中心に突然の豪雨に見舞われた。数台のマシンがアクアプレーニングを起こし、ストレート上で多重クラッシュが発生。その中には上位を争っていた8号車トヨタ(ラピエール)とNo.3アウディR18 e−トロン クワトロ(M・ボナノミ)のマシンがあった。8号車はマーシャルの手を借り、なんとかピットまで自走で戻る。しかし3号車はリアセクションを大きく壊し、再スタートできずリタイアが決定。5連覇を狙う名門チームが、早くも1時間半を過ぎたところで1台を失うことになってしまった。
また8号車もかろうじてピットに戻ってきたがフロントサスペンションにまでダメージが及んでおり、完全修復が終了するまで45分もかかってしまう。これでクラス最下位となる総合49位まで転落。トヨタ勢も実質的に1台が優勝争いから脱落する事となってしまった。
【新エース、中嶋一貴が激走!運も味方し2号車アウディとの差は2分に】
急激な天候変化により2度のセーフティーカー導入があったが、3時間を過ぎると再び太陽が顔を出しレース展開も落ち着き始める。SCの間に異なるピット戦略を選んだNo.20ポルシェ919ハイブリッド(T・ベルンハルト/M・ウェバー/B・ハートレー)が一時的にトップに立つも、安定したペースで周回を重ねる7号車が再びトップを奪い、2号車がそれに続く展開。
予選ではアドバンテージを得ていたトヨタだったが、決勝では様々な波乱にも巻き込まれることなく順調に周回。特に2号車はエース格であるロッテラー、トレルイエとつなぎトップを追いかけた。一方の7号車は、ペース的には安定しているものの、流れは若干追い詰められる展開が続く。しかし、こういう時に頼りになるが「エースの存在」。85周を終えたところで、満を持して中嶋一貴が乗り込み、夕暮れで暗くなり始めたサルトサーキットに出かけていった。
予選でのポールポジション獲得もあってか、他クラスのマシンに引っかかっても、焦らず安定したペースで周回。スティント序盤は3分26秒台で走り、チャンスがあるところでは3分24秒までペースアップ。またセーフティーカー導入とルーティーン(元々予定していた)ピットのタイミングなど、運も味方をする。本当に目に見えない少しずつの積み重ねではあったが、着実に2号車との差をひろげ、8時間を過ぎたところでブルツにバトンタッチ。昨年までにはなかった「頼もしさ」が今年の一貴には間違いなくあり、それがチーム全体の士気を高めているような気がした。
こうして日暮れを迎えた時点で、両者の差は約2分。通常のレースであれば致命的なタイム差だが、ル・マンの耐久レースでは、同一周回であることも含め、2分という差は「大きようで短い差」。この事を十分にしっている両チームだからこそ、夜中のバトルは、ここ数年の中で一番と言っても良いくらいハイレベルで見応えがあった。
そして毎年訪れる一つ目の関門「ル・マンの長い夜」今年もそこで、数々のドラマが生まれた。その話は、次回のPart.3でご紹介しようと思う。
『記事:吉田 知弘』
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