今年も数々のドラマが生まれた2014ル・マン24時間耐久レース。第81回を迎えた今回はアウディ、トヨタに加えポルシェがLMP1クラスに参戦。ハイブリッドシステムを搭載した最新鋭のマシンが総合優勝を争った。
週末は、ちょうどサッカーW杯の日本×コートジボワール戦とル・マンの決勝レース時刻が重なり、スタートからゴールまで、一体どんな流れだったのか?その詳細を知らない人も少なく無いだろう。
今回から観戦塾では数回に分けて、3強争いで盛り上がったル・マンの週末を「総集編」という形で振り返っていこうと思う。
【前年覇者がいきなり大クラッシュ!!デュバルは奇跡的に軽傷も、マシンは粉々に】
現地時間の6月11日、54台のマシンが集結し、本格的にル・マンのレースウィークが始まった。まずは4時間のフリー走行。その開始1時間を過ぎたところで、背筋が凍るような衝撃的なクラッシュシーンを目にすることになった。昨年の優勝メンバーであるロイック・デュバルが乗り込むNo.1アウディR18 e−トロン クワトロがポルシェカーブを過ぎたところの複合セクションで大クラッシュ。時速270kmの状態でコンクリートウォールに激突。勢い止まらず、その先の防護フェンスまで飛んでいき、跳ね返って着地。リア部分は原型を留めないくらい粉々に砕け散り、ルーフ部分が損傷したコックピットは、デュバルの黄色いヘルメットが外から確認できるほどマシンは大破した。
実は、昨年もスタート直後にGTE-Amクラスに参戦していたアラン・シモンセンが亡くなる悲しい事故が発生した。その時よりもインパクトは大きかったため、サーキット全体は重苦しい雰囲気に包まれた。
[幸い軽傷で済んだデュバル(2013年富士スピードウェイで撮影)]
幸いデュバルは、駆けつけたマーシャルとレスキューチームに救出され、メディカルセンターへ搬送。その時点で意識はあり、念のため病院で検査を受けたがかすり傷程度の軽傷で済んだ。大事を取ってデュバルは週末のレースを欠場。代役にマルク・ジェネが加わることが決まったが、マシンは修復不可能というくらいの状況。チームは夜を徹して分解し、ほぼゼロからマシンを組み立て上げた。
【7号車トヨタがポール!中嶋一貴がエースとしての存在感をみせつける】
注目の公式予選、ハイライトは12日の2日目に訪れた。これまで赤旗が連発し思うようにタイムアタックができていなかったトヨタとアウディ。一方のポルシェは初日からタイミングよくタイムアタックを成功させ暫定トップを維持する。
予選2回目も残り30分を切った。終盤。これまで満足にタイムアタックできていなかったNo.7トヨタTS040 Hybridに中嶋一貴が乗り込みコースイン。一昨年は自らのパートでクラッシュしリタイア、昨年は終盤の天候変化に翻弄されメンバーを組んでいたN・ラピエールがクラッシュ。表彰台を逃す4位に終わった。
今年こそという思いで、ル・マン入りをしていた一貴は、僅かなチャンスでミスのない完璧な走りを披露。これまでのトップタイムを0.4秒上回る3分22秒589を記録。この直後にチェッカーフラッグが振られ、残り2時間の予選3回目を前にトヨタ勢が主導権を握った。
そしてポールポジションが決まる予選3回目。グリーンシグナルと同時に、再び一貴が乗り込んだ7号車がコースイン。夕日が沈んでいくサルトサーキットを果敢に攻め、ベストタイムを3分21秒789まで更新。この後も、ポルシェ、アウディのライバル勢がタイムアタックを試みるが3分22秒台が精一杯。80回を超えるル・マン24時間の長い歴史の中で、初めて日本人ドライバーがポールポジションを獲得。しかも、一貴が記録したタイムでのポールポジション獲得した。
予選後、7号車のピット前に群がる世界中のメディア。多くのカメラとマイクの先には、一貴の姿があった。現在のトヨタ・レーシング体制の初年度からル・マンに挑戦している一貴。だが、国内レースとの掛け持ちもあり、WECシリーズ戦は何度か欠場。どうしても、「ブルツ、ラピエールがメインでいて、一貴はあくまで3人目」という印象が少なからずあったが、今回のル・マンでは「俺が7号車のエースだ」ということを、まさに走りで証明した瞬間だった。
ここ2年はアウディに先行され続けた予選で、初めて2台ともアウディ勢の前からのスタートポジションを手に入れたトヨタ勢。本番の決勝レースは24時間の長丁場。もちろん、前からスタートするというのは大きなアドバンテージにはならないし、24時間を通して何もトラブルが起きないという保証はどこにもない。ただ、サーキットにいた多くの関係者。さらに日本で応援していた多くのファンが「今年はきっと面白い24時間レースになるのかもしれない。。。」と、ワクワクしながら14日のスタートを迎えたことだろう。
注目の決勝レースは、まさに予想外のドラマが連続だった。その詳細は「総集編Part.2」でご紹介したいと思う。
『記事:吉田 知弘』
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