【F1】2013年第16戦インドGP:レースレポート

©Pirelli
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 今回のレースでチャンピオンが決まるかもしれない2013年のF1第16戦インドGP。注目の決勝レースが27日(日)、ブッダ・インターナショナルサーキットで行われた。

 週末を通してドライコンディションではあるものの、スモッグにより靄に包まれた中での決勝レース。ポールポジションは今季7度目のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)。ここで5位以内に入れば史上最年少での4年連続チャンピオンが決定する。一方、唯一逆転のチャンスが残っているランク2位のフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)は決勝向きのミディアムタイヤをQ3で選択。それが影響し8番手グリッドから追い上げを狙った。

 スタートでは2位のニコ・ロズベルグ、3位のルイス・ハミルトンに迫られるものの冷静に対応しトップで1コーナーへ。メルセデスAMGの2台が続くが、5番手スタートのフェリペ・マッサ(フェラーリ)が前半のストレートを上手く利用し2位へ一気に浮上した。その後方の中団グループでは、激しい順位争いでスペースを失ったマーク・ウェバー(レッドブル)の右リアタイヤとアロンソの左フロントウイングが接触。サイドプレート付近を破損し大きく後退。その後2周目に緊急ピットインを行い、ウイングを修復するとともに新しいミディアムタイヤに交換。ほぼ最後尾まで脱落したアロンソは苦しいレースを強いられてしまう。

 後方での混乱をよそに、1周目から2.4秒のリードを築いたベッテルは、早々とミディアムタイヤに交換するため1回目のピットストップを敢行。今回のインドGPでは各チームともソフトタイヤがあまり長時間使えないと予想し、いつもより早めに第1スティントを切り上げる予定で、その中でも真っ先に動いたのがベッテルだった。これで17位まで順位を落とすが、新品タイヤという利点も生かし、次々と前を走るマシンをオーバーテイク。10周目を迎えた時点ではあっという間に6位までばん回していた。

 このタイミングになると、上位陣が続々と1回目のピットへ。7周目にロズベルグが動くと、翌8周目にマッサとハミルトンがタイヤ交換を行い、第2スティントに突入した。ここでスタート時にミディアムタイヤを履いていたウェバーやセルジオ・ペレス(マクラーレン)、ダニエル・リチャルド(トロ・ロッソ)らがトップ3を固める。前方がクリアになったウェバーは一気に1分31秒台にペースを上げて後続を引き離しにかかるが、同僚ベッテルもそれに匹敵するペースで猛追。13周目にリチャルド、21周目にはペレスを抜き去り2位に浮上した。

 ウェバーはレースの約半分にあたる28周目まで第1スティントを引っ張りピットイン。ここでタイヤ使用義務消化のため4周だけソフトタイヤで走行。32周目に再び新しいミディアムタイヤを履いてコースに復帰する。今回も第2スティントで素晴らしい走りをみせたベッテルは31周目に2回目のピットインを敢行。前述のとおりウェバーが翌周に再度ピットに入ったため、ここでトップに返り咲き、戦略は異なったもののレッドブルのワン・ツー体制が築かれた。

 このままチェッカーを受ければコンストラクターズでもレッドブルが4連覇を決めるとあって、このままゴールまで行きたいチーム側だったが、思わぬ事態が発生してしまう。40周を過ぎたところで2位ウェバーに突然オルタネーター(発電機)関係のトラブルが発生。チームの指示によりコース脇にマシンを止めて今季4度目の0ポイントレースを余儀なくされた。

 これで2位に上がったのは6番手スタートだったキミ・ライコネン(ロータス)。彼は7周目にミディアムタイヤへ交換してからロングランを続行。このまま1ストップで乗り切るというギャンブルに出たが、さすがに残り10周を切ったところで失速。ロズベルグ、ロメイン・グロージャン(ロータス)らに次々と交わされていってしまった。

 中盤にトップに立って以降は後続との感覚もあり、結果的に今回も独走となったベッテル。ウェバー車に起きたトラブルを警戒して、最後はチーム側から細かい指示がとんだが、ミスのない確実な走りで60周を走り切り、チェッカーフラッグ。史上最年少での4年連続チャンピオンを優勝で決めた。それと同時に2位以下に157ポイントの差をつけたレッドブル・レーシングが、こちらも4年連続でのコンストラクターズチャンピオンに輝いた。

©Pirelli
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 遂に歓喜の瞬間を迎えた2013年の王者ベッテル。1周のウイニングランを終えるとピット側に用意されたパルクフェルメには戻らずメインストレートへ。グランドスタンドに集まった多くのファンの前で“勝利の舞”と言わんばかり派手なドーナツターンを披露。その場でマシンを停車すると、今シーズンも自らをチャンピオンに導いてくれたマシンの前でインド風に深々と一礼。そのまま興奮が収まらずにグランドスタンドで駆け寄ると、フェンスによじ登って直前まで使用していたレーシンググローブを客席へ投げ入れる大サービスを披露した。

 表彰式で、いつもより感慨深い表情で母国ドイツ国歌を聞いたベッテル。「何を言おうか、事前に決めていたけど、ここに立ったら忘れてしまった。本当に言葉にならないくらい嬉しいよ。最後のドーナツターンは、本当はやってはいけないんだけど、今回は感情を抑え切れなかった。」と語った。

 ポイント差の関係上、ここで決まるのは確実だったが、ミハエル・シューマッハ、ファン・マニュエル・ファンジオ、アラン・プロストといったF1史上でも偉大なドライバーたちと肩を並べる4度目のチャンピオン獲得。若干26歳のベッテルが、また大偉業を成し遂げる一日となった。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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