2013年のF1第8戦イギリスGP。注目の決勝レースが現地時間の30日、モータースポーツの聖地シルバーストンで行われた。予選でポールポジションを勝ち取ったのは母国GPを迎え気合いが入っているルイス・ハミルトン。2番手にニコ・ロズベルグが入り、メルセデスAMG勢がフロントローを独占。2列目にはセバスチャン・ベッテルとマーク・ウェバーのレッドブル陣営が固めるオーダー。母国GPでは自己最高の5番グリッドを手に入れたポール・ディ・レスタ(フォースインディア)は予選の車検で重量規定違反が見つかりタイム抹消。最後尾から決勝に臨んだ。
気温21℃、路面温度32℃。予選同様に強い風がふく中で決勝レースがスタート。ハミルトンが勢い良くダッシュを決め余裕を持って1コーナーへ。路面コンディションが悪い偶数列(イン側)グリッドのロズベルグ、ウェバーが出遅れ、ベッテルが2位を奪う。2008年以来の母国優勝を決めたいハミルトンは序盤からプッシュ。後続に2秒以上の差をつけ、なおもファステストラップを刻み続けた。ところが、1回目のピットが近づいていた8周目のウェリントンストレートで左リアタイヤがバースト。なんとかピットまで戻ってこられたものの、大きくタイムをロス。念願の母国GP制覇は夢と消えてしまった。
実は今週末は予選日からタイヤバーストが散見されており、このハミルトンをきっかけに9周目にはフェリペ・マッサ(フェラーリ)、さらに15周目にはジャン・エリック・ベルニュ(トロ・ロッソ)も同じ左リアタイヤをバースト。コース上にタイヤやマシンの破片が散乱したことから、これらを回収するために16周目に入ったところでセーフティカーが導入された。
この時点での順位はベッテル、ロズベルグ、エイドリアン・スーティル(フォースインディア)、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)、キミ・ライコネン(ロータス)というトップ5。バーストの原因については高速コーナーで縁石を使用した際にタイヤが傷ついてしまったことによるものと推測され、各ドライバーに無線で縁石を使わないよう指示がとんだ。
コースの清掃が終わり22周目にレースが再開されると、これまでの流れとは異なり王者ベッテル主導の展開に。常に1分36秒台をキープする安定した走りを披露。約3秒後方で追いかけるロズベルグに全く隙を与えなかった。34周目にライバルが先にピットインしたのを確認すると、ベッテルも翌35周目にタイヤ交換を行い、逆転されるチャンスを確実に潰していく。これで今回のレースもベッテルの勝利が決まったと誰もが思い始めた次の瞬間、全く予想していなかった事態が発生した。
41周目の最終コーナーに差し掛かろうとしていた首位ベッテルは突然動力がなくなりスローダウン。ギアボックスのトラブルで今季初のリタイアを余儀なくされてしまったのだ。ちょうど最終コーナー明けのコース脇にマシンを止めてしまったため再びセーフティカー導入。この間に上位陣は再度ピットに入り、ミディアムに交換。2013年のイギリスGPは残り数周でのスプリント勝負となった。
残り7周でレースが再開されると、5位ウェバー、8位アロンソが猛プッシュ。コースに留まることを選択したスーティル、ライコネンらをかわし2・3位に浮上。特にウェバーは今季初優勝を諦めておらず、1位ロズベルグを猛追。最終ラップに入るところで0.7秒差まで追い詰めたが横に並ぶまでには至らずフィニッシュ。なんとかトップの座を守り切ったロズベルグが今季2勝目。直前の27日に28歳の誕生日を迎えたロズベルグ。最後は思わぬ形で手にした勝利だった、素晴らしいバースデープレゼントになった。2位にはウェバー、3位にはアロンソがそのまま入り、一度はタイヤバーストで後退したハミルトンはセーフティカーを上手く利用し4位まで挽回してチェッカーを受けた。今回の決勝ではハミルトン、マッサなど合計5回のタイヤバーストが発生。性能面で批判を受けているピレリタイヤにとっては厳しいレース内容となり、次回以降の改善に期待したい。
注目のチャンピオン争いは、ベッテルがリタイアしたことにより再び混戦模様になりつつあり、2位アロンソが11ポイント(21pts差)、3位ライコネンが98ポイント(34pts差)まで追い上げてきている。次回の第9戦ドイツGPは連戦で行われ、7月7日(日)に決勝が行われる。ランキング首位のベッテルや、今回勝ったロズベルグにとっては母国GPとなるだけに、彼の走りに注目が集まりそうだ。
『記事:吉田 知弘』
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