2号車アウディがトップを守り切ったまま迎えた2013年ル・マン24時間耐久レースの終盤。今年現れたル・マンの魔物は最後の最後まで参戦チーム・ドライバーを苦しめるドラマを用意していた。
残り1時間を切って3号車アウディと7号車トヨタが表彰台をかけた激しいバトルを展開。このままゴールまで続くのかと思われたが、いきなり雨が降り始め路面はあっという間にウエットに。ここで足元をすくわれクラッシュしたのが7号車を駆るニコラ・ラピエールだった。その後も雨脚は強まる一方でコース各所でコースオフする車両が多発。なんと11回目のセーフティカーが出動する事態となった。7号車はなんとか自力でピットに戻りチーム総出で修復作業を開始。約30分でマシンを直し、3位争いの権利は失ったが5位まで追い上げてきていた1号車アウディの前でコースに復帰した。
10分ほど前までは土砂降りだったコースも、あっという間に太陽が再び顔を出し、路面も徐々に乾いていく。コースコンディションも落ち着いた残り30分でレースが再開。そこで優勝を諦めていない2位の8号車トヨタがトップと同一周回になるが、順位を入れ替えるには時間が足りずタイムアップ。終盤には今年のル・マンを象徴するかのように、またしても雨が降り出すという、まさに天気に翻弄された24時間。その中で一番安定してトラブルもなく走行を続けた2号車のトム・クリステンセン/ロイック・デュバル/アラン・マクニッシュ組がトップチェッカーを受け、総合優勝を果たした。昨年は2台とも早々にリタイアを喫したトヨタ勢だったが、今年は大きなトラブルもなく、2台とも完走。セバスチャン・ブエミ/アンソニー・デビッドソン/ステファン・サラザン組の8号車が2位表彰台を獲得。3位にはマルク・ジェネ/ルーカス・ディグラッシ/オリバー・ジャービス組の3号車が入った。総合3連覇を狙ったアンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ/マルセル・ファスラー組の1号車アウディは途中のトラブルが大きく響き5位に終わった。
アンカーを務めたクリステンセンは、史上最多ル・マン優勝記録を更新し通算9度目。また序盤の6スティント連続走行や、ナイトセッションでの快走など、総合優勝に大きく貢献したロイック・デュバルは、初のル・マン制覇となった。
日本人勢では、中嶋一貴の乗った7号車トヨタは表彰台に一歩届かず4位。小林可夢偉の71号車Afコルセ(フェラーリ)は総合26位/LMGTE-Proクラス5位で無事完走を果たした。LMP2クラスに参戦した中野信治の25号車デルタ-ADRと井原慶子の28号車ガルフレーシングMEは途中リタイアに終わった。
『記事:吉田 知弘』
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