いよいよ現地時間ではフリー走行、予選が始まる第81回ル・マン24時間耐久レース。今年は小林可夢偉が参戦するということもあり、例年になくLMGTE-PROクラスにも注目が集まっている。普段は総合優勝争いに関わらないクラスだけになかなか取り上げられる機会が少ないクラスだが、今年は可夢偉の参戦もあり予想不可能な大混戦となりそうだ。
【来季のF1につながる重要な1戦“ル・マン”】
昨年までザウバーチームからF1世界選手権に参戦していた可夢偉。日本グランプリでの3位表彰台を勝ち取る激走、そしてスタンドから沸き起こった10万人の可夢偉コールは記憶に新しい。しかし、2013年は“より良い環境”を手に入れるため、F1のレギュラーシート獲得を断念。イタリアのスクーデリア・フェラーリと契約し、フェラーリ458を使用するAFコルセからWECに参戦することを決めた。一度レギュラーの座を離れると再びシートを獲得するのは困難と言われているF1。しかし、彼は「来年必ずF1に復帰する」と宣言。現在も継続的に交渉が続けられていると思われる。その中でチーム側にとって重要な判断材料の一つになるのが「WECでの成績」。可夢偉がエントリーしているLM GTE-PROクラスは総合優勝争いを直接行うことはないが、「同一クラスのライバルを相手にどんなレースをしたのか?」が注目ポイントとなる。もちろんクラス優勝をすることが求められているのだが、シリーズの中でも一番歴史があり最も過酷なル・マン24時間を制することは大きな意味を持つ。特に開幕戦、第2戦ともにあと一歩というところでクラス優勝を掴み損ねているだけに、第3戦のル・マンは何としても勝ちたいところ。
これまで経験したことがない1周13km以上の超ロングコースに加え、初体験となるナイトセッションでの走行。週末を通して戸惑う部分もあるかもしれないが、可夢偉らしいアグレッシブな走りで来季につながるル・マン24時間レースにしてもらいたい。
【可夢偉のライバルとなるのは?大混戦のGTE-PROクラス】
今回のLM GTE-PROクラスは可夢偉に加えトニ・バイランダーとオリビエ・ベレッタが乗り込む71号車のAFコルセを含め12台がエントリー。フェラーリ458やアストンマーティンのヴァンテージV8、ポルシェ911にシボレー・コルベットなど、世界を代表するスーパーカーが集結。そして元F1ドライバーや各国のGT選手権で活躍中の強者も参戦しており、今年は例年になく激戦が予想される。
その中でも一番のライバルとなりそうなのが、開幕戦シルバーストンで優勝を果たしているアストンマーティンの99号車(ロブ・ベル/フレデリック・マコヴィッキィ/ブルーノ・セナ組)だ。昨年まで可夢偉同様にF1で活躍していた故アイルトン・セナの甥であるブルーノをエースに、今年はSUPER GT(GT500)のウイダーモデューロHSV-010でも活躍中のマコヴィッキィもGTカーでの耐久レースは経験豊富。第2戦スパでは残り30分から可夢偉と2位争いで白熱。見事猛追を振り切り2位フィニッシュを勝ち取るなど実力も十分兼ね備えている。マシンもAFコルセ勢と比べると幾分かアドバンテージを持っており、レース序盤からリードを広げていく展開も予想される。可夢偉らにとっては一番気をつけなければいけない相手だろう。
そして、もう一つ注意しなければいけないのが“チームメイト”だ。今回もGTE-PROクラスは2台体制で挑むAFコルセ。そのもう一方の51号車(ジャンカルロ・フィジケラ/ジャンマリア・ブルーニ/マテット・マルセッリ組)も第2戦スパで優勝しており、ル・マンでの経験も豊富。特にコチラに関しては同じチームなだけに何としても前でチェッカーを受けたいところだろう。
総合優勝に直接関わらないクラスとは言えども、そう簡単にクラス優勝できるほど簡単ではないのがル・マン。とにかく24時間をどれだけ安定して走り、その中でトラブルやアクシデントも出来る限り少なく出来るか?こういった地道な積み重ねが最終的に勝利に繋がるだろう。今年のル・マンは、可夢偉の走りにも注目だ。
『記事:吉田 知弘』
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