2013年のF1第4戦バーレーンGP。21日(日)に行われた決勝レースでは2番手からスタートしたセバスチャン・ベッテル(レッドブル)が優勝。今年も大混戦が予想される中でいち早く2勝目を挙げた。昨年のバーレーンGP同様に終盤まで接戦になることが予想されたが、レース中盤から独走状態。まさに完勝だった。今回の〜Point of the Race〜では、他を圧倒したベッテルのレース戦略をライバル達と比べながら振り返っていこうと思う。
【現行タイヤでは3ストップが有利か、攻めの走りが的中】
今回、ベッテルの独走劇のきっかけとなった大きな要因が「レース戦略」だった。ピレリタイヤはバーレーンGP用にミディアム(白)とハード(オレンジ)のドライタイヤを全チームに供給。硬めのタイヤ2種類が用意されたが今年のピレリタイヤは消耗が早く複数回タイヤ交換が必要になるようなコンパウンド設定になっている。そのため今回も3ストップ作戦が主流となったが、後方から逆転を狙うドライバーが2ストップを選んでくることも十分に予想された。
2ストップ作戦は、ピット作業でのロスタイムが2回分(約22秒×2回)で済むのが利点だが、その分1セットのタイヤで長い距離を走らなければならないため、摩耗によるペースダウンを考慮しながらの走行が強いられる。一方、3ストップ作戦がスタートから合わせて4セットのタイヤを使用でき、それぞれの走行距離も短く、タイヤの消耗を気にすることなく走れるが、2ストップに比べて1回分(約22秒)多くロスタイムが発生するため、その分をカバー出来るだけのリードを序盤から築いていく必要がある。
そのため、ベッテルは序盤から積極的に1位ニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)に仕掛けていき3周目に前に出てトップへ。そこから一気に後続を引き離し始める。8周目あたりから3ストップ作戦を選んだドライバーたちが続々と最初のタイヤ交換を済ませベッテルも10周目にピットイン。ハードタイヤに履き替えてコースに復帰する。この時点でピットに入らず周回を重ねていたのがポール・ディ・レスタ(フォースインディア)とキミ・ライコネン(ロータス)。これで彼らが2ストップ作戦だということが判明。ベッテルが一番意識しなければいけない相手が決定する。今回は柔らかい方となるミディアムタイヤでロングランを試みる2人だったが、消耗が早い今年仕様のタイヤに路面温度40℃、マシンもほぼ満タン状態というコンディションでは1分42秒台に留めるのが精一杯。逆にタイヤ交換したてのベッテルは1分39秒台を連発し、その差をみるみるうちに縮めていく。そして14周目、ディ・レスタが1度目のピット作業を行う間にメインストレートでライコネンに追いついたベッテル。そのままターン1で追い抜き、あっという間にトップの座を奪い返してしまった。
もちろんベッテルの速さが光った逆転劇だったが、実はこの展開は前回の中国GPでもフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)がジェンソン・バトン(マクラーレン)を追い抜くまでと同じ流れなのだ。この時も優勝したアロンソは3ストップ作戦。今のピレリタイヤでは、ピット作業によるロスタイムが減らすよりも、3ストップ作戦にして攻めていくほうが最善の選択肢なのかもしれない。
【ベッテルにとって一番のライバル、アロンソの早期脱落】
その後は一度もトップを譲ることなく、レース後半は一人旅となったベッテル。ここまで楽な展開になったのも、序盤に最大のライバルだったアロンソが脱落したからだった。すぐ後ろの3番手からスタートし5周目に2位に浮上。ベッテルとの一騎打ちになるのではないかと思われたが、7周目にDRSのウイングが開きっぱなしになるトラブルが発生。急きょ1回目のピットストップを早めてタイヤ交換と同時にリアウイングを修復するが、再びDRSを使用してしまい症状が再発。再びピットインを余儀なくされ、レース序盤に優勝争いから脱落していた。フェラーリ陣営にとっては一度DRSを直した際に、再度使用をひかえていれば大きなタイムロスになることはなかっただけに今回も悔やまれるレースとなってしまった。
戦略も同じ3ストップと思われており、DRSが使えない状態でも終盤は怒濤の追い上げで8位まで挽回。もしトラブルが起きずに真っ向勝負となっていたら、間違いなく一番の脅威になっていただろう。今回のベッテルはライバルのアクシデントにも助けられたレースだった。
【舞台はいよいよヨーロッパラウンドへ】
このバーレーンGPで、2013年序盤の“フライアウェイ・ラウンド”は終了。次回の第5戦スペインGPから、各チームが本拠地を構えるヨーロッパへ舞台を移す。今年も中2周と次のレースまで時間があるため、序盤4戦での課題を解決したアップデートバージョンのマシンでスペインに乗り込むチームがほとんど。ここまではベッテルが2勝を挙げ、ポイントランキングでも77ポイントでトップだが、優勝1回・2位2回と安定した結果を出しているライコネンが10ポイント差で追いかける展開。さらにスペインGPからは彼以外のライバルも巻き返して来ることが十分に予想される。史上3人目となる4連覇に向けての挑戦は、まだまだ始まったばかり。ヨーロッパラウンド以降、どのようなレースをみせてくれるのか?現王者の走りから目が離せない。
『記事:吉田 知弘』
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