2013年のF1第4戦バーレーンGP。いよいよ注目の決勝レースが現地時間の21日(日)15時から行われた。予選同様に晴天に恵まれたバーレーンインターナショナルサーキット。気温29℃、路面温度42℃と中東らしいドライコンディション。しかし決勝日は風が強く、辺りの砂漠やランオフエリアから砂が飛んできてコース上は滑りやすい状態。フォーメーションラップでも埃っぽい路面状況になっているのが判るほどだった。
【ロズベルグ、PPスタートを上手く活用できず】
今回のポールポジションはニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)、スタートからリードし自身2勝目を狙いたいところだが2番手にセバスチャン・ベッテル(レッドブル)、3番手にフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)と今季すでに優勝している2人の存在も気になるところ。注目のスタートでは思いっ切りベッテルを牽制しトップを死守したロズベルグ。一方、イン側を封じ込まれたベッテルはアウト側からアロンソに隙をつかれ3位に後退。ところが直後のターン4で少しアウトに膨らんだ隙を見逃さず再び2位の座を奪い返す。予選では抜群の速さをみせるメルセデスAMG勢だが、いざ決勝が始まるとタイヤの消耗に苦しみペースが上がらない。逆に序盤からトップを奪って後続とのリードを広げたいベッテルが1周目から猛プッシュ。3周目のターン5でロズベルグの攻略に成功すると、他より約1秒速い1分41秒台のタイムを連発。一気にリードを築いていく。その後もペースが上がらないロズベルグは3位アロンソ、4位ポール・ディ・レスタ(フォースインディア)と次々に抜かれ4位に後退。いきなり苦しいレース展開となってしまう。
【アロンソとフェラーリ、またしても余計なミスで優勝争いから脱落】
5周目を終え1位ベッテル、2位アロンソ、3位ディ・レスタという上位のオーダー。しかし早めにトップに立ったベッテルがすでに約4秒のリードを築き頭一つ抜け出た状態。それでもアロンソが必死に追いつこうとするが、7周目にDRSの不具合でウイングが開きっぱなしになるトラブルが発生。すぐに1回目のピットストップを早める形で緊急ピットイン。ハードタイヤに交換すると同時にウイングも緊急で修復してコースに復帰する。しかし完全にDRSは直っておらず使用するとトラブルが再発する可能性があったにも関わらず、アロンソはすぐにDRSを使ってしまう。その結果また同じ症状が発生し再度ピットイン。これで優勝争いから完全に脱落してしまう。
【3ストップのベッテルが異次元の速さを発揮】
最大のライバルが脱落し、楽な展開になった首位ベッテルは10周目にピットイン。今回のピレリタイヤは当初の予定を変更しミディアム(白)とハード(オレンジ)と硬い2種類のドライタイヤを用意。それでもハードブレーキングが必要なヘアピンに中速の複合コーナーが存在するバーレーンインターナショナルサーキットでは3ストップ作戦が主流となった。ベッテルと同じタイミングで上位陣が揃って1回目のタイヤ交換を済ませるが、これで1位に立ったディ・レスタと2位に上がってきたキミ・ライコネン(ロータス)は引き続き周回を重ねる。実は彼らは2ストップ作戦を選んでいたのだ。タイヤ交換によるロスタイムが1回分(約22〜23秒)少ないのがメリットではあるが、逆に1セットのタイヤで長い距離を走らなければならないため、ペースを抑えてタイヤを労る必要がある。その点で1セットあたりの距離が短くて済むベッテルは1分42秒台で踏ん張る上位2人に対し、1分39秒台のハイペースで追いかけていく。そして14周目、首位ディ・レスタが1回目のピットストップを行なっている間にコース上でベッテルがライコネンをオーバーテイク。あっという間にトップの座を自力で奪い返した。
【2ストップのライコネンが安定したペースで2位争いをリード。ディ・レスタ、グロージャンも善戦】
トップに立って以降もペースを落とすことなく順調に周回を重ねたベッテル。気づけば25周目に自身2回目のピットストップの時点で2位を走るロメイン・グロージャン(ロータス)に22.2秒差と大量リード。難なくトップのままコースに復帰すると、いきなり1分38秒649のファステストラップを記録。その後は燃料が少なくなり始めていることもあり1分39秒台を連発、異次元のペースで後続を引き離していく。一方2位以下はハードタイヤでスタートし後半2スティントでミディアムタイヤを履くという変則3ストップ作戦のグロージャンと、2ストップ作戦で粘り強く走るディ・レスタ、ライコネンが争う展開に。27周目にグロージャンが2度目のピットストップで一時後退。その間に2位ディ・レスタ、3位ライコネンの順位となるが、タイヤマネジメントで上回った元王者ライコネンが距離を詰め、33周目のターン1でオーバーテイクに成功。2位に浮上し、首位ベッテルを追いかける。34周目に2度目のタイヤ交換を行い新しいハードタイヤを装着すると1分38秒591のファステストラップを叩きだしベッテルを追いかけるが、彼の3回目のピットストップにかかるロスタイム(約22秒)圏内まで追いつくことが出来ない。作戦通りのペースを維持したベッテルは42周目に最後のタイヤ交換を行うと、ライコネンの8.3秒前方でコースに復帰。そのまま今季2勝目に向けて最終スティントの15周に臨む。
残り10周を切り、1・2位の順位がほぼ確定したが、終盤にきて3位争いが白熱。2ストップで粘り強い走行を続けてきたディ・レスタに、後半2セットをミディアムタイヤで攻めてきた3ストップ作戦のグロージャンが猛プッシュ。デビュー3年目のディ・レスタにとっては初表彰台のチャンスだったが、勢いのあったグロージャンを抑えることができず残り5周で逆転を許してしまう。
【ベッテル“ワンサイドゲーム”で今季2勝目】
これで1位ベッテル、2位ライコネン、3位グロージャン。奇しくも昨年のバーレーンGPと同じトップ3になったが、その内容は全く異なっており、現王者ベッテルの速さが光った“ワンサイドゲーム”になった。十分なリードを保っていたベッテルだったが、最後まで手を緩めることなく残り2周で1分36秒961のファステストラップを叩きだし、余力を残した状態でトップチェッカー。通算28勝目、そして一番乗りとなる今季2勝目をマークした。2位のライコネンは4戦中3回目の表彰台と安定した強さが目立つ。3位グロージャンは昨年ハンガリーGP以来となる自身3度目の表彰台となった。序盤にDRSのアクシデントを抱え苦しいレースとなったアロンソは最後まで諦めずに追い上げ8位入賞。なんとか4ポイントを獲得。ポールポジションだったロズベルグは終始タイヤの摩耗で4回もタイヤ交換を行うという苦しい展開で9位に終わった。
注目のポイントランキングは、2勝目をあげたベッテルが74ポイントで首位キープ、着実に毎戦高ポイントを獲得しているライコネンも67ポイントで2位。以下ハミルトン(50ポイント)、アロンソ(47ポイント)と続いている。
このバーレーンGPでシーズン序盤の通称「フライアウェイ・ラウンド」は終了。次回は3週間後の5月10〜12日の第5戦スペインGPがカタロニア・サーキットで開催、いよいよチームの本拠地があるヨーロッパ・ラウンドが開幕する。
『記事:吉田 知弘』
コメント
トラックバックは利用できません。
コメント (0)
この記事へのコメントはありません。