2013年F1第3戦中国GP。注目の決勝レースは3番手からスタートしたフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が今季初優勝を飾った。スタートからコース各所でオーバーテイクシーンが見られ、白熱したレースとなった今回の中国GP。今回の〜Point of the Race〜では、3番手からトップに浮上。その後、後続との差を確実に広げていくきっかけとなった第2スティントの走りに注目してみた。
【周りに合わせるのではなく、自分のペースを終始徹底】
スタートで2番手に上がったアロンソは、序盤から積極的に1位ハミルトンを狙っていく。今回ピレリが用意した中でも柔らかい方のソフトタイヤ(黄)を履いていた両者。レース序盤の6〜7周目にピットインして次のタイヤに交換しなければいけないという事は、おそらくアロンソも分かっていたと思うが、そのピットストップのタイミングを待つのではなく5周目に自らがコース上で追い抜きトップを奪う。この直後、ハミルトンがピットインし、その翌周に自身も最初のピットストップを行うことになるが、早い段階でトップに立ってリードを築いていたことが功を奏し、ハミルトンに再逆転を許すことなくコースに合流。第2スティントに入っていく。
ピットを終えたアロンソの前には、戦略の関係上ピットに入らず周回を重ねているマシンが数台。もちろん、新品タイヤのアロンソが有利であるが、マクラーレンのジェンソン・バトンとセルジオ・ペレス以外は全て彼と同じ3ストップ作戦の予定。という事は無理に抜かなくてもピットに入ってくれ、自動的に順位を上げることが出来る。しかし、アロンソは「待つ」のではなく「攻める」事を選んだ。9周目にジャン・エリック・ベルニュ(トロ・ロッソ)を抜くと、2ストップで我慢の走りを続けていたペレス、バトンも抜き去り、自力で再びトップに立つ。
残り2回のピットストップが必要なアロンソが、この時点で2ストップ作戦だったバトンのオーバーテイクに成功したことにより、レース後半に向けてマークしなければいけないライバルがいなくなることに。2回目のストップ以降はほぼ独走状態となり、結局2位に10秒以上の大差をつけてフィニッシュすることになった。
状況によっては、ピットに入ると分かっている前のマシンを、接触のリスクを回避するために抜きに行かないケースもよくある。しかしアロンソは後ろで待っている間に遅いペースに付き合わされ、逆に後続のマシンに逆転のチャンスを与えてしまうことを嫌い、自分のペースを維持。その過程で現れたライバル達をしっかり抜いていった結果、トップの座を確実にするリードを築くことになった。
【前回マレーシアGPの失態を取り返し、ランキング3位に浮上】
ウイニングランを終え、パルクフェルメに戻ってきたアロンソ。マシンに降りると真っ先にチームスタッフの元へ駆けより、喜びを分かち合った。
前回マレーシアGPでは、スタート直後にフロントウイングを破損。そのままレースを続行しようと試み、ピットに入らず2周目に突入したところでウイングが脱落しコースアウト。致命的な判断ミスが原因でリタイヤを喫してしまった。昨年もわずか数レースのリタイヤ(0ポイント)がチャンピオン争いに影響し、2012年のタイトルを逃すことになってしまったアロンソとフェラーリ。「シーズン中に一番やってはいけないことはポイントを落とすこと」だと分かっていたはずだったが、2戦目に自らのミスで0ポイントレースを作ることになってしまった。
そういう意味で今回の中国GPではマレーシア分も取り返すためにも優勝が必須だった。3番手から周りの走りを気にすること、ひたすら攻め続けトップに浮上。その後も決して守る姿勢を見せず集中して最後まで周回を重ねた。
これで25ポイントを手にしたアロンソは合計43ポイントでランキング3位。首位のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)との差は9ポイント。まだシーズン序盤ということを考えれば、前回の失態は十分に取り返せたと言えるかもしれない。しかし、すでに一度リタイヤを喫してしまっていることも事実。今後、ヨーロッパラウンドに入ってからはライバル陣営の巻き返しも十分に考えられる。今後のチャンピオン争いの事を考えると、次回バーレーンGPでも今回のような「攻める」走りが求められそうだ。
『記事:吉田 知弘』
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