いよいよ3月15日(金)に2013シーズンが開幕するF1世界選手権。今年もセバスチャン・ベッテル(レッドブル)、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)、ジェンソン・バトン(マクラーレン)、キミ・ライコネン(ロータス)、ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)とチャンピオン経験者が5人も揃い、昨年にも増して大接戦のシーズンになるのではないかと言われている。その中で、どうしても注目を集めてしまうのが、史上最年少で3年連続王者に輝き、今シーズンは60年以上のF1の歴史の中でたった2人しか達成していない「4連覇」に挑戦することになるベッテルだ。
2010年に最終戦までもつれ込んだタイトル争いを大逆転で制し初のチャンピオンを獲得。翌2011年は開幕戦から快進撃が続き、10月の日本GPで4レースを残した状態で早々と2連覇を達成した。しかし昨シーズンの2012年は序盤から苦戦が強いられる。車両規定の変更により、それまで最速だったレッドブルのマシンを支えてきたブロウンディフューザーが禁止。さらにライバル勢も打倒レッドブルのために力を注いできた。この結果、ベッテルは何とか第4戦バーレーンGPで優勝を飾ったものの、それ以外はほとんど他チームに勝利を奪われ、シーズンの折り返し地点だった第10戦ドイツGP終了時点では当時ランキング首位だったアロンソに44ポイントも引き離されていた。しかし、そこからマシンに改良を加え速さを取り戻したレッドブル。怒涛の追い上げでアロンソに追いつき、第16戦韓国GPで逆転。そこから不運なアクシデントで最後尾に転落してしまうレースも鬼神のような走りで挽回し、何とか最終戦ブラジルGPで3連覇を決めた。
不可能に思われた2012年タイトル獲得を実現させたベッテルとレッドブルチーム。今度は4連覇への新たな挑戦が始まっていく事になるが、シーズン前の冬季テストの段階から逆境に立たされている。スペインで3日程、合計12日間のテスト走行機会が設けられ、そのうちの6日間でステアリングを握ったベッテル。ところが、その全てでトップタイムを記録することが出来なかった。もちろんテスト走行でのタイムというのは、あくまで“参考タイム”。全員が予選を想定したタイムアタックを行う訳ではないので、テストでのタイム=今年の勢力図にはならない。しかし、チャンピオンチームであり“速さ”を売りにしていたレッドブルとベッテルが一度もトップタイムを記録できなかったというのは、さすがに気になる。
実際に開幕戦のフリー走行が始まってみないと分からない部分が多いが、今回のテスト結果に加え、他チームの動きを見ていると昨年同様に序盤戦は苦戦が強いられる可能性が高く、4連覇に向けて黄色信号が早くも見え始めているという意見も少なくない。確かにそう言わざるをえないかもしれないテスト結果だったが、彼らは昨年も同じように苦しいシーズン序盤戦を過ごし、そこからドライバーとチームの底力で見事な逆転劇を魅せてくれた。この経験は間違いなくチャンピオンチームにとっては今シーズンの“自信”につながるはずだ。
これまでトップの座に君臨してきたミハエル・シューマッハが引退し、新たにF1界を引っ張っていく立場になったベッテル。2013シーズンは“現王者にしかできない”新たな挑戦が待ち受けている。今まで以上に高く険しい“壁”を25歳の王者はどのようにクリアするのか?シーズンを通してじっくり注目したい。
『Photo:Pirelli』
『記事:吉田 知弘』
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