『撮影:SHIGE』
SUPER GT第8戦もてぎの決勝。GT300クラスは戦前の予想通り三つ巴のチャンピオン争いに注目が集まる1戦となった。
ポールポジションはHANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)。午前中のフリー走行でもトップタイムをマーク。さらに最大のライバルと言われていたランク2位のtriple a vantage GT3(吉本大樹/星野一樹)が予選で発生したトラブルで22番手スタート。ハンコックポルシェのタイトル獲得はレース前から大きく近づいていた。
しかしフリー走行後に降り始めた雨の影響で決勝はウエットコンディション。今年のハンコックタイヤはドライコンディションでは圧倒的な強さを見せるものの、昨年強かったウエットは今年あまり得意としていない。スタートこそ無難に決めたが、その後は2位エンドレスTAISAN 911を中心にトップ5〜6台が団子状態で進んでいく。一方2番手スタートのエンドレスTAISAN 911は逆転チャンピオンのためには、まず優勝が必須条件というような状態。前半のステアリングを握った横溝直輝が序盤からハンコックポルシェ影山正美にプレッシャーをかけ、8周目のヘアピンでトップ浮上に成功。その後は一気に後続を引き離していった。
一方抜かれたハンコックポルシェはズルズルと後退。12周目には5番手にまで落ちてしまい、タイトル獲得のチャンスが薄れていく。その後方ではtriple a vantage GT3の星野一樹が怒涛の追い上げを展開。第5戦鈴鹿1000kmを思い起こさせるようなゴボウ抜きをみせ、16周目にはハンコックポルシェも抜いて6位に浮上。その後も快進撃を続け、順位を3位まで上げた29周目にピットイン。燃費が悪く作業時間が他チームよりかかってしまうアストンマーティンはタイヤ無交換作戦を敢行。吉本大樹に後半を託した。トップのTAISANポルシェも十分なリードを築いて33周目にピットイン。峰尾恭輔にステアリングが託された。
奇跡の逆転に向けプッシュを続けるアストンマーティン吉本だったが、なんと先ほどのピット作業時にピットレーンでのスピード違反があったことが判明。痛恨のドライブスルーペナルティを受けてしまい8位に後退。掴みかけていた逆転チャンピオンの可能性がまたしても遠のいてしまった。
ライバル達の相次ぐアクシデントにも救われたTAISANポルシェ。プレッシャーもかかる大事な後半スティントを任された峰尾も安定したペースで周回を重ねていった。しかし、残り10周を切ったところで雨脚が強くなり始めたのと、周回遅れのマシンに引っかかってしまったこともあり2位のJLOCランボルギーニ GT3(山西康司/山内英輝)に背後まで迫られてしまう。
この時点で2位でもチャンピオンが確定する状況だったが、やはり“勝ってチャンピオンを決めたい”ところ。何度か横に並びかけられるシーンもあった峰尾だが、意地で踏ん張りトップで最終コーナーを通過。自身にとっては初のGTトップチェッカーを受けた。
2位もJLOCランボルギーニ GT3がそのまま入り、3位にはマネパランボルギーニ GT3(織戸学/青木孝行)とランボルギーニ勢2台が表彰台を獲得。結局吉本/星野組のアストンマーティンは5位、影山/藤井組のハンコックポルシェは6位に終わった。
これでTAISANポルシェが82ポイント、ハンコックポルシェ75ポイント、アストンマーティンが73ポイントとなり、ランキング3位だったTAISANポルシェが大逆転でシリーズチャンピオンを獲得。前身の全日本GT選手権を含めると2003年以来8年ぶりとなるチャンピオンを獲得した。
昨年はシートがなく、1年ぶりにGTに帰ってきた横溝は「今年チャンスをくれたチームと、スポンサーの皆様やずっと応援してくれたファンの皆さんに感謝したいです。本当にお待たせいたしました!」と涙ぐみながらコメント。これがGT初優勝でもある峰尾も「チャンピオンも嬉しいけど、自分にとってはGT初優勝なので本当に嬉しい。それなりにプレッシャーもありましたが、後続とのリードを維持することに集中しました。」とレースを振り返った。
三つ巴の決戦となったGT300クラスのチャンピオン争いは、結局一番逆転の可能性が少ないと言われていたTAISANポルシェが笑う結果となった。
『記事:吉田 知弘』
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