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【S-GTレースレポート】(1)GT300チャンピオン:皆で勝ち取ったチャンピオン

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[決勝前のグリッドについた初音ミクBMW]

10月16日。ツインリンクもてぎで行われたSUPER GT第8戦決勝。GT300クラスは、No.4初音ミク グッドスマイルBMW(谷口信輝/番場琢)がポールトゥウィン。逆転で初のチャンピオンを獲得した。
レース前は、No.11JIMGAINER DICXEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)に5ポイント負けている状態からスタート。今回は番場がスタートドライバーを務め、谷口が後半を走る戦略だったが、全く危なげない走りで優勝を飾った。

「GTを始めて10年目、やっとチャンピオンが獲れました。最終戦でまさかの逆転劇で感無量です。」

ウイニングランを終え、チームメンバーが待つパルクフェルメに戻ってきた谷口。いつもは笑顔でインタビューに答えるのだが、今回は色々な想いが込み上げ、珍しく涙を見せた。

【谷口信輝“長年、欲しくて欲しくて仕方がなかったチャンピオンがやっととれた”】
今季から初音ミクBMWのグッドスマイルレーシングに移籍。今までRE雨宮などGT300の名門チームで走ってきた谷口にとって、“痛車チーム”と通常とは異なる形態のチームで2011年を迎えることになった。これについては、レース後の記者会見で、こう振り返った。
「新しいチームにきて、最初はちゃんとしたレーシングチームじゃない印象があり、いつも辛口でワガママもたくさん言っていましたが、チームも毎回戦っていくごとに強くなっていって、一年間で成長していってくれました。途中、度重なる性能調整にも苦しみましたが、それに負けない素晴らしいタイヤをヨコハマタイヤさんが用意してくれ、皆が本当に良く頑張ってくれました。」

いつもはチームの大黒柱として、何があっても落ち着いて対応。後輩の番場にも色々アドバイスをし、さらにチームが苦しんでいる時は自らムードメーカーとなって盛り上げるなど、まさにチームを牽引する存在だった谷口。その結果、チームはシーズンを通して成長し、見事チャンピオンを獲得。長年欲しくて仕方がなかったGT300の王座を獲得し、いつもは堂々としている谷口が、普段は見せることのない一面が表に出た瞬間だった。
それだけ、このGT300チャンピオンの重みのある、誰もが欲しがる“称号”なのかもしれない。

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【番場琢“みんなで勝ち取ったチャンピオン”】
長年、初音ミク号のドライバーとして戦ってきた番場にとっても、今回が初のGT300チャンピオン。
いつもは先輩谷口にイジられている姿が有名で、初優勝した第3戦マレーシアでも終盤にJIM GAINERに追い詰められ、レース後に叱られるという一幕もあった。
しかし、最終戦もてぎでは、今季初めてスタートドライバーを任され、ポールポジションから一度トップを譲ることなく谷口にバトンをつないだ。

今年のレースの中で一番堂々とした走りを見せた番場。やはり谷口がチームに加入した事が番場にもプラスに働いたようだ。
「シーズンを通して、本当に谷口さんに色々なことを教わりました。特に谷口さんの場合は、メンタル面(レースに向けてどう準備していくか?レースへの取り組み方など)をたくさん教えてくれて、新しい発見も多かったです。なので、今年はサーキットに入る前の部分の心構えが変わりました。今回もGT300でポールスタートは初めてで、そこのやり方や前を走るマシンがいない中で、どうやって走っていくかと谷口さんに聞いて、決勝スタートまでイメージをしっかり固めてレースに挑みました。」

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[スタート前も谷口からアドバイスをもらう番場]

そして、今季を振り返って、このようなことを話してくれた。

「年間で3勝して、最後は優勝でチャンピオンを決めれて・・・。凄い出来過ぎたシーズンだったなと思います。でも、僕達ドライバーの力だけではこんな結果は出ませんでした。毎回素晴らしいタイヤを用意してくれたヨコハマタイヤをはじめ、メカニックやチームスタッフ全員が完璧に仕事をしてくれて、皆が心の底から“チャンピオン獲るぞ!”という気持ちでやってくれた結果だと思います。そして何より、個人スポンサーの皆さんの支援と、毎回の熱い声援があったから、チームとしても大きな力をもらってここまで頑張れて来れたのが、チャンピオン獲得の要因だと思います。本当に、皆さんには感謝してもしきれないくらいです。ありがとうございます!」

初音ミク号がSUPER GTに登場したのは2008年。参戦当初は相次ぐトラブルで決勝を走れないこともあった。そこからチーム体制も徐々に強化していき、2009年には番場琢が加入。そして今年はGT300ではベテランドライバーとなる谷口信輝が加入し、新しいBMW Z4での参戦となった。
今季は第3戦マレーシアで初優勝。第6戦富士で国内初優勝を遂げた初音ミクBMW。このチームは16000人を超える個人スポンサーを中心に支えられ、今までのSUPER GTのチームとは異なった形態となっている。

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[初音ミクBMWを応援する方々からの寄せ書き]

最終戦もてぎにも150人を超える個人スポンサーやファンが集まり、初音ミクBMWのピット裏には決戦を前にした谷口・番場・チームスタッフにエールを送ろうと訪れる個人スポンサーで溢れていた。
その雰囲気は、決して“勝たなきゃいけない”という堅苦しい雰囲気ではなく、一挑戦者として“皆で勝ちに行こう!”という前向きな雰囲気だった。

SUPER GTは、単にマシンの力、ドライバーの力だけで勝てる競技ではない。
そのマシンを用意するメカニックやチームスタッフ、マシンの足元を支えるタイヤ、そしてドライバーやチームを必死で応援するファンや個人スポンサーの力。

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[GT300の年間表彰でのドライバー・監督の登場に拍手で出迎えるチーム関係者]

今年の初音ミクBMWは、この全てが揃っており、全ての要素でライバルよりも上回っていた。
まさに“初音ミク号に関わる全員の団結力”で勝ち取ったチャンピオンだった。

『記事:吉田 知弘』