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【ありがとう!インディジャパン】もてぎで出会った“たくさんの笑顔”

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2011年9月18日。14年間続いてきた「インディジャパン」の歴史に、一つのピリオドが打たれた。9月16日から始まった最後のインディウィークエンドでは、3日間で述べ73000人のファンが来場。アメリカ最高峰のオープン・ホイール・カーレースの興奮と感動を目に焼き付けていた。

14年という長い間、もてぎで開催され続けてきたインディジャパン。多くの日本人ファンに愛されてきたが、同時に遠いアメリカから、年に1度日本にやってくるインディドライバーたちにも、特別な思いがあり、毎回日本にやってくるのを楽しみにしていたようだ。

それに関するエピソードを、2008年にもてぎオーバルを制したダニカ・パトリックが話してくれた。

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[金曜サイン会で、子どもが持っていたダニカミニカーに自らサインをする]

「日本の場合は、特定のドライバーだけでなく、全員のドライバーにファンが集まってきます。例えば今朝(フレンドシップデイの話)ホテルを出た時に、多くのファンが一人のドライバーを囲んでサインを求めていました。私は“この人気は多分タクマだろうな”と思ったのですが、実はライアン・ハンターレイだったのです!だから日本ではどのドライバーもファンから愛されている。だから毎年日本に来るのが楽しみだし、日本でのレースが大好きなんです。」

F1と同様に、遠い海の向こうで開催されているモータースポーツの祭典「インディカーシリーズ」。それが日本に年に一回だけ日本で観て、参加できるチャンスが、このインディジャパンだった。
この週末も、フレンドシップデイのサイン会では、佐藤琢磨を中心に、全員ドライバーの前に長蛇の列が出来、それぞれのサインブースで数え切れない笑顔の華が咲いていた。中には、ずっと会いたかったドライバーと会って話ができ、感極まって涙するファンもいた。
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[決勝日、パドックでファンに囲まれながらも、快くサインをするブリスコー]

こうして、来場したファンも“インディジャパン”という雰囲気に、自然と中に入って参加していたいという思いが大きかったのかもしれない。
土曜日の前夜祭では午後5時30分という遅めの時間からスタートしたにも関わらず、グランドスタンドには多くのファンが集まり、イベントを盛り上げた。過去のインディウイナーとしてゲストで登場したエリオ・カストロネベスは、ファンに向けて、こう語った。
「僕は今年、みんなに“さよなら”と言うつもりはない。だって、またみんなの前でレースができると信じているから。それが早く実現する事を願っているよ。」

ドライバー達にも、特別な思いがあったインディ。しかし、それも18日決勝日を迎え。やがて別れの時が近づいていた。

決勝レースが終わり、夕暮れのツインリンクもてぎでは、最後のステージイベントが行われた。
そこに日本を代表して参戦した佐藤琢磨を武藤英紀が、応援してくれたファンに挨拶をするために登場。そこに待っていたのは彼らに「お疲れ様!おかえり!」という気持ちを笑顔と拍手で伝える大勢の“インディジャパンのファン”だった。今季2度もPPを手にし、昨年以上に手応えを掴んで挑んだインディジャパン。なかなか歯車が噛み合わないセッションが続き、決勝も2度の接触で順位を落としてしまうなど、最終的に10位で終わった。レース後は悔しさも爆発させていた琢磨。しかし、最後の最後まで応援してくれたファンに、このようなメッセージを送った。

「何度ありがとうと言っても足りないくらい、本当に感謝しています。昨年インディジャパン初参加で、母国レースは3年ぶりで、久しく“みんなの前で走れる!”という嬉しい感覚を忘れていました。それがモチベーションとなって、絶対今年はいいところ魅せようと心に誓ってやってきました。ただ今日は自分なりに頑張ったけど、ちょっと及ばなかったので、次回はいつインディジャパンが復活するか分かりませんが、それまでに自分ももっと成長して、皆さんの前でもっといい走りが出来るように頑張ります。本当に皆さん応援ありがとうございました!」

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[決勝後に行われた“応援ありがとうステージ”には3日間で一番多くのファンが集合]

決勝レース後、サーキットビジョンでは今回のレースに参加した全ドライバーによる“ありがとうインディジャパン”のメッセージテープが流れ、14年間応援し続けてくれたファンに感謝の気持ちを伝えた。なかには涙ぐむファンもいて、インディジャパンの別れを惜しむ声も多かったが、チームもドライバーもファンも、もてぎを後にする瞬間は、不思議と笑顔の人が多かった。

実際に、インディジャパンの復活に関する話は、現時点では全くあがっていない。それでも、「もうすぐインディがもてぎに帰ってきてくれる!」「また、もてぎでインディを観ることができる!」と信じているファンや関係者が多く、今回が最後という実感を持っていない人が多い気がした。

この3日間で出会った無数の笑顔。それは「この14年間で、このもてぎでのレースは、インディカーシリーズには必要不可欠な存在」になっていた証拠だったのかもしれない。

“また、もてぎでインディが観れる!”という事を信じて、ファンや関係者はもてぎを後にしていった。

『記事:吉田 知弘』