6月5日、大分県のオートポリスサーキットでフォーミュラニッポン第2戦決勝が行われ、13位と後方からスタートした中嶋一貴(TOM'S)が開幕戦同様に大逆転のレースをみせ、FN初優勝を飾った。
午後2時30分から54周で行われた決勝レース。決勝日の朝から雨天に見舞われたオートポリスで、全マシンが雨用タイヤを選択して、グリッドに整列。スタートが切られた。
スタートから、前日の予選で1位を獲得した塚越広大(ダンデライアン)と、2位大嶋和也(ル・マン)、3位小暮卓史(NAKAJIMA)が3つ巴の状態で1コーナーに侵入。一度は抜かれた塚越だが、すぐにトップを奪い返し、レースをリードしようとする。
しかし、予想以上に路面状況の回復が早く、1周目から2位大嶋を筆頭に、中嶋一貴(TOM'S)、中嶋大祐(NAKAJIMA)、らがピットイン。晴れ用のスリックタイヤに交換した。
トップの塚越は3周目にタイヤ交換するも、早めにスリックを選択した大嶋、中嶋一貴に逆転を許してしまう。一方、こういった難しいコンディションで経験を活かしたい小暮だったが、3周目にスピン、リタイヤとなってしまう。
難しいコンディションにトラブルやコースアウトするマシンが続出する波乱の展開となっていくが、レース中盤は、4位山本尚貴(無限)と5位ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(IMPUL)の激しい接近戦に注目が集まる。
王者オリベイラの猛追に、一時は抜かれかける山本だったが、必死に抑え込み4位をキープ。開幕戦ではポールポジションを取りながらも、決勝で結果を残せず、鈴鹿で悔し涙を流した山本。そのリベンジとばかりに意地の走りを見せる。しかし、47周目の1コーナーで、ついに王者に屈し、5位に後退してしまう。
注目のトップ争いは1周目にタイヤ交換という作戦を選んだ大嶋と中嶋一貴の一騎打ちとなる。予選13位から、今回もレース戦略を駆使して2位までジャンプアップしてきた一貴。一時は大嶋との差が4秒以上あったものの、安定したペースを維持し、少しずつ距離を縮めていく。これに反応した大嶋は逃げようとするも、逆にペースが乱れて一貴に1秒後方まで迫られてしまう。
そして、37周目。最終コーナーで一気に間合いを詰めた一貴は、メインストレートで「オーバーテイクシステム」を発動。アウト側から大嶋に並びかけ、1コーナーで躊躇することなく先に飛び込んで、ついにトップに立つ。
直前の数周、真後ろに着きながらも「確実なチャンス」が来るのを待ち続けていた一貴。少ないチャンスの中、一撃で大嶋を抜き去り、ラストスパートをかける。
一貴とのトップ争いでタイヤを消耗していた2位大嶋は、ズルズルとペースが落ちていき万事休す。F1帰りで注目されていた中嶋一貴が、FN参戦2戦目で初優勝を勝ち取った。
彼のレースキャリアで最後に優勝したのは2006年のユーロF3以来で、約5年ぶり。表彰式での一貴は、感極まるを堪えるかのように、ずっと笑顔をみせていたのが印象的だった。
またTOM'Sにとっては、開幕戦のロッテラーに続き2連勝。今回はル・マン24時間耐久レース出場のため、欠場となっているロッテラーに代わり、一貴がポイントランキングのトップに躍り出ることになった。
2位は大嶋が守りきり、ポールポジションスタートの利点を活かせなかった塚越が3位に入った。
次回のフォーミュラニッポンは、第3戦富士スピードウェイ。7月16・17日で開催される。今回のレースの主役は一貴だったが、他にも主役候補が多い今年のフォーミュラニッポン。次戦も目が離せない。
『撮影:SHIGE』
『記事:吉田 知弘(ビギナー観戦塾)』