鈴鹿2&4レースの「2輪代表レース」として開催されたJSB1000の決勝レースが、15日12時から鈴鹿サーキットで行われた。
15周のスプリントレースとなった決勝レース。ポールポジションは2010王者の秋吉耕佑。2位加賀山との予選タイム差は、わずかに0.013秒と大接戦の決勝レースが期待された。
注目のスタートでは、秋吉のダッシュがつかず、2位加賀山が1コーナーをトップで通過。しかし、その後のS字で秋吉がトップを奪い返し、ここから2分7秒台の驚異的なペースで独走をはじめる。
秋吉独走モードになり始めたレース前半でサーキットを沸かせたのが、緊急参戦を決めた伊藤真一。スタート後に5位に落ちてしまうが、その後ペースを上げて加賀山や中須賀を追い抜き、トップ秋吉に迫る。先日の東日本大震災で自らも被災した伊藤、すでにJSBを引退を表明していたが、「自分がいいレースをすることで、被災地に元気を届けたい」と緊急参戦。“東北地方に笑顔を取り戻すために、頑張るんだ”という気迫の走りを見せてくれた。
レース後半になると、序盤は独走だった秋吉のタイヤの消耗が進み始め、残り3周では、1位秋吉、2位中須賀、3位伊藤との差が0.5秒以内という大接戦の最終バトルとなる。しかし、追う中須賀にミスが出て、秋吉にリードを許してしまう。
これで勝負が決し、秋吉がJSB1000開幕戦を制した。
そして、震災復興のために参戦を決めた伊藤は3位表彰台を獲得、表彰式でトロフィーを受け取る瞬間は、グランドスタンドから惜しみない拍手が送られた。
【レース後記者会見】
優勝:秋吉耕佑(F.C.C.TSR Honda)
「路面温度が予想よりも上がり、後半はタイヤマネジメントをする必要があった。そのため、コーナー進入時を抑えて“加速重視”の走りに切り替えてゴールを目指し、最後の3周だけはラストスパートをかけた。最後は中須賀がミスをしてくれたのが、最大の勝因だったね。」
2位:中須賀克行(YSPRacingTeamwithTRC)
「鈴鹿ではタイヤマネジメントがレースに大きく影響し、特にダンロップタイヤは後半のタイヤ消耗が気になったので、前半はタイヤマネジメントを意識してレースをした。最後、秋吉さんに追いついてシケインで仕掛けたのですが、それが大きなミスになってしまった。この週末は全体を通してよい流れではなかったので、こうして2位でゴールできて良かった。」
3位:伊藤真一(F.C.C.TSR Honda)
「今回、ここに来ている目的は“勝利を求める”というものではなく、とにかくベストな走りを見せて、被災者を元気にしたかったし、正直自分もげんきになりたかった。震災以降、地元にいるとレースの雰囲気とは全く関係なく、今も大変な生活を強いられている人が多い。その中で“自分に出来る事は?”と考えて、レースに出て元気を与える事ができればと思い参戦を決めた。レース後半は疲れてしまい、ペースも落ちてしまったけど、今回はまず完走する事が主の目的だったので、無理に攻めすぎないよう心がけた。また機会があったら、参戦したい。」
『記事:吉田 知弘(ビギナー観戦塾)』