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JAFGPを終えて~富士スプリントカップ勝者の共通点

20年ぶりのJAFグランプリとして開催された「富士スプリントカップ2010」から1週間。
改めて、JAFGPでの勝者のレース、優勝後のコメントを振り返り、今回シリーズ戦では見られなかった「スプリントレース」の裏側について、詳しく見ていきたいと思う。

GT300優勝者
第1レース:平中克幸(JIMGAINER DIXCEL DUNLOP F430)
第2レース:田中哲也(JIMGAINER DIXCEL DUNLOP F430)

GT500優勝者
第1レース:リチャード・ライアン(ZENT CERUMO SC430)
第2レース:伊藤大輔(ENEOS SC430)

今回、GT300ではJIMGAINERのフェラーリF430が2連勝し、GT500ではレクサス勢が圧倒的な強さを見せる形となった。一見、偶然に見えるような結果だったが、実は「ある共通点」が勝者たちにはあった。

【GT300:ダンロップタイヤの特徴】
第1レースを優勝した平中、レース後の記者会見で「レース前半はタイヤが温まらず、苦しいレースになったが、後半になりタイヤが温まってきてペースを取り戻す事が出来た」とコメント。また、「次の日のドライバーに対して、何かアドバイスすることは?」という質問に対して、スタートも重要だけど、タイヤが温まるのに時間がかかるので、その辺をどうやって進めていくかが鍵になると思います。」と話した。
この翌日、どうチームでレース2を担当するベテランドライバーの田中哲也は、平中のコメントどおりのレース展開を見せた。土曜日の平中と同じように、レース後半にトップ集団に追いついた田中。そのまま18周目で2台のZを逆転し、トップに躍り出た。
レース後の記者会見で、詳しい話を聞くことは出来なかったが、おそらく「ダンロップタイヤは前半の温まり悪い分、後半に勝負をかけられる」という“初日のデータ”があったからこそ、無理をせずに22周という短いレースの中でも、ちゃんと計画を立てて挑んだ結果だったのではないかと思う。

【GT500:レクサス勢の一致団結力】
GT500も同じく、初日に優勝したリチャード・ライアンが翌日のドライバーに対して「タイヤの消耗が鍵となってくる。22周しかないから、ピットストップをすると大きなロスになるから、タイヤ交換を避けて、どうタイヤをマネジメントしていくかが勝負のポイントになってくるよね」とコメントしていた。
GT500のスプリントレースが始まるのは15時。11月の富士では夕方に近い時間帯で、気温・路面温度ともに下がっていくコンディションでレースをする事になる。
いつもとは違う「路面温度が低い」コンディションと、いつもとは違う「全開勝負の22周」というルールが、タイヤに異常な磨耗を起こしてしまう傾向にあったようだ。
間違いなく、レース1を経験した全てのチームが思った事だ。しかし、この状況を「上手くレース2」に活かしたのがレクサス勢、1位の6号車伊藤大輔だった。
スタートを上手く決め、終始トップを走り続けた伊藤は、レース後の記者会見で「今回のスプリントカップはタイヤの磨耗を気にして走らなければいけないのは知っていた。でも、最初は何としても逃げたかったので、事前にレクサス勢のレース1でのタイム推移を見て、どのくらい後半で苦しくなるかをチームと計算していたから、上手くペースコントロールができた。(終盤、他車に追いつかれた時も)特に気にはならなかった」と話してくれた。
また、今回は上手くいったスタート。実は彼にとって“スタンディングスタート”は8年ぶりだそうで、フォーミュラニッポンに参戦していた頃以来の事。さらに当時はエンストや大失敗が多かった事でも有名だった。
この点に関しても伊藤は、「事前練習はスタート進行の際に2回、フォーメーションラップで1回、計3回できました。レース1で戦ったメンバーのデータを見せてもらったり、実際にどのような感じでスタートしたか、細かく話も聞いていたので、本番では不思議なくらい冷静にスタートできました。なんで8年前は、こんな冷静になれんかったんやろうか・・・」とコメント。
ここでも、レクサス勢の“仲間”たちから話を聞いたり、データを共有した事で重要なスタートをミスすることなく決めれたのだと思う。


【“個人戦”だったはずのスーパーGT特別戦。しかし勝者の共通点は“チームワーク”】
通常は2人1組で戦うスーパーGTのシリーズ戦。今回は“特別戦”ルールとして、ドライバー交替を禁止し、各ドライバーの「腕」で勝負をつけるという、今までのGTにはなかったアイディアでレースが行われた。
しかし、結果的にフタを開けてみれば、2クラスで勝利を手にしたチームに共通したことは「チームワーク」だった。GT300のフェラーリは、土曜日の平中のレース内容からヒントを得た田中が、無駄なく終盤で1位を奪い優勝。GT500では、チームは違っても、同じ「レクサスメンバー」としてデータや情報を共有し合える環境にあるレクサス勢が一致団結、そのデータを上手く使いこなした伊藤が優勝を飾った。

当初、我々が予想していた「シリーズ戦では見られない個人戦」が期待されたJAFGP。確かに両レース共に白熱した展開で、来場されたファンを大いに盛り上げた事は事実だ。しかし、こうして中身を紐解いていくと、その白熱したレースを最終的に「勝った」ドライバー・チームは、昔からスーパーGTで勝つために必要な事“チームワーク”が重視されていたっという、興味深い結果が出た。
そして、いつもはシリーズ戦の最終戦で、その年の公式レースが終了するスーパーGT。しかし、今回は最終戦の後にJAFGPが開催され、両クラス共に「今シーズンのシリーズ戦でチャンピオンを取れなかったチーム」が総合優勝。“JAFグランプリタイトル”を手にして、2010シーズンが終了する事となった。
これが、2011年シーズンにどう影響するのか?
今から長いシーズンオフに突入するが、もう来年の4月が待ち遠しくて、仕方がない。

『記事:吉田 知弘(ビギナー観戦塾)』