『7月18日に富士スピードウェイで体験走行会を実施!』
富士スピードウェイでフォーミュラ・ニッポンが開催された7月18日(日)は、同会場でトヨタを感じて体験できるイベント「わくわくトヨタ」が同日開催されたが、その中で体験型の本格フォーミュラカー「ライトフォーミュラ」の体験走行会が行われた。
[左:イベントでは長蛇の列が出来た 右:マシンの説明後いよいよコースへ]
このライトフォーミュラはユーザーの負担するランニングコストの低減、および運搬などの利便性の向上を目的に、世界最小の本格的なフォーミュラカーとして設計されたもので、小さいながらもモータースポーツ専用マシンとしての強度を十分に有しており、高い安全性を実現させている。
現在、東日本のサーキットなどを中心に「のりもの塾」や体験走行会を実施。今回富士スピードウェイでは、ドリフトコースで157名がこのマシンのステアリングを握った。
『小さいながらも走りは本格フォーミュラカー』
筆者は今回、このマシンの走行を体験することが出来たので、その様子をお届けしよう。
フォーミュラカーならではの狭いコックピットに収まると、まず6点式のシートベルトを装着。シフトチェンジはHパターンの5速。シフトノブは左側に付いており、日本車を運転している人には操作しやすい構造になっている。ペダルはもちろん3ペダル。シーケンシャルシフトと違い、シフトチェンジ時はしっかりとクラッチを踏んで操作することになる。
走行準備が出来、電気系統スイッチをONにしてエンジンスタートボタンを押してエンジン始動。クラッチを踏みこんでギアをローに入れ、ややアクセルを踏み込んでクラッチミート。半クラッチのストロークも適度に確保されているので、エンストすることなくスムーズにスタートできる。マニュアルシフトの車を運転した事がある人なら、戸惑うことなく車を走り出させる事が出来るだろう。この手軽さは体験型マシンの大きな特徴だ。
ところが一旦コースインするとライトフォーミュラはモータースポーツ専用マシンの特徴を表してくる。まずは加速。軽四の660ccノーマルエンジンながらも、不要なものはなにも付いてない軽量マシンは一気に加速。そしてコーナーに入ると13インチ165mm幅65扁平のタイヤは想像できないグリップを発揮する。これは高度に設計されたサスペンションのおかげだ。しかし、このマシンは、少し限界を超えるとリアが流れ出す。普通はこれでスピンに陥り「ジ・エンド」なのだが、ライトフォーミュラはその挙動が体中の体内センサーに即座に信号を送ってくれる。マシンの動きがタイムロスなく体に伝わってくるのだ。そしてステアリング操作、アクセル操作も即座に反応してくれるので、リアが少々流れてもスピンに陥ることは少ない 。いや、それ以上にマシンの安定性が高いので、大きくスライドせずにタイヤはすぐにグリップを戻してくれる。筆者はこれまでレーシングカーの運転を幾度か経験した事があるが、入門クラスのマシンでこれだけの安定性を実現できているのは経験した事がなかった。走行を初めてすぐに「このマシンの可能性は無限に広がりそうだ!」と大きな希望を実感した。
マシンを開発したレーシングガレージENOMOTOの榎本信次さんに話を伺ったところ、「もちろん速さの追及も行っていますが、操作のしやすさも重要な要素として開発を進めました。サスペンションの構造は特に考えて作ってあります」とのこと。初心者がモータースポーツを経験する上で何が必要なのかを、十分に考慮して作られた「ライトフォーミュラ」。榎本さんの言葉通り、とても操作しやすく、しかも速さを実感できるマシンだという事を、筆者は肌で感じた走行体験だった。
『観戦派も参戦派も、ライトフォーミュラは最適なマシンだ!』
野球やサッカーも一度でもプレーを体験すると、そのスポーツの観戦の楽しさが大きく進化する。選手たちが何をしているのか、手に取るように分かるからだ。モータースポーツの場合はお金がかかる事もあり、なかなかその「体験」をする事が出来ない。手軽に体験できるのはレンタルカートぐらいだろう。レンタルカートもモータースポーツ体験の上ではとても楽しく、多くの経験が出来るものだが、3ペダルとシフトチェンジを体験することはできない。しかしライトフォーミュラはフォーミュラカーの操作、そのすべてを体験できるのだ。「こんな操作をしながらバトルをしているなんて!」「あの場面ではどんなシフト操作をしたんだ?」そんな事を考えながらのモータースポーツ観戦は、これまで以上の魅力を感じさせてくれるだろう。我々が想像できない次元で戦っているドライバー達、その「想像できない」事が「想像を超える操作をしている事が想像できる」に変わる。ライトフォーミュラを体験すれば、モータースポーツ観戦の魅力も大きく変化する事だろう。
そしてこのライトフォーミュラは、今後モータースポーツへの参戦を計画している人にもお勧めのマシンだ。榎本さん曰く「速く走れるようになるまで、何10回もの走行を必要とするマシンではありません。誰でもすぐに速く走れるようになります」。つまりライトフォーミュラは簡単にタイムが出せる構造になっているのだ。もちろんコンマ1秒、100分の1秒の戦いの中では速さに差が出るだろう。しかし本格的にレースをしようと思う人が「1周10秒も遅くてまともに走れない・・・」なんて事は、このライトフォーミュラではほとんどあり得ないと言われている。初心者でも高いレベルでの走行経験ができれば、身に付くものも多くなる。速く走らせることが難しいミドルフォーミュラで低いレベルの走行経験を積むより、ライトフォーミュラで高い次元での走行経験を積んだ方が、同じ走行時間でも得るものは数倍多くなる。今後レースデビューを考えている人にも、ライトフォーミュラは最適なマシンだと言えるだろう。
『「のりもの塾」「体験走行会」のスケジュールをチェック!』
ライトフォーミュラは年間10回近くの「のりもの塾」や「体験走行会」を開いている。次回は富士スピードウェイP7特設会場を舞台に「のりもの塾」が開催されます。今後のスケジュールの詳細は、レーシングガレージENOMOTOホームページ(http://racinggarage-enomoto.com/)をチェックしよう。
※7月18日の体験走行会で、筆者のドライブによりマシンを破損してしまい、関係各位に多大なるご迷惑をおかけしたことを心からお詫びいたします。今後このような事がないよう、最新の注意を払って取材活動を行う事を誓います。
フリーモータースポーツライター:マイケル藤木(藤木充啓)