雪が降る寒い1日となった3月7日。東京・恵比寿の「恵比寿The Garden Room」で、国内最高峰のフォーミュラカーレース「全日本選手権フォーミュラ・ニッポン」の2011年体制発表会が行われ、悪天候の中、会場には多くのモータースポーツ関係者が集まった。
【2012年は、海外レースも開催予定】
この体制発表に先立ち、JRP(日本レースプロモーション)から、驚きの発表がされた。なんと、2012年にフォーミュラニッポンのシンガポール戦として、チャンギ・モータースポーツ・ハブでの開催実現を目指す基本合意がされ、準備段階に入っていることが発表された。
開催コースは、シンガポール東部のチャンギ国際空港近くに建設中の「チャンギ・モータースポーツ・ハブ」2012年に完成予定で、シンガポールとしては初の常設サーキット。全長約3.7kmのコースでFIAグレード2のライセンスを取得しているとの事だ。
また、シンガポール・モータースポーツ協会(SMSA)のハロルド・ネット会長も出席された。「この度、チャンギ・モータースポーツ・ハブでフォーミュラ・ニッポン開催に向けての合意が出来たことを、光栄に思います。日本からも多くのファンがシンガポール大会に来てくれることを、心よりお待ちしております。」と挨拶をした。
1996年のフォーミュラ・ニッポン発足から、今年で15年目。いよいよ日本最高峰のフォーミュラーレースが、国内だけではなく、海外進出に向けてのプロジェクトが動き出した。
【2012年は“環境を配慮した新システム”を各マシンに装着義務付け】
シンガポールでのレース開催に向けて準備が始まったフォーミュラ・ニッポン。その競技車両も、来年変更点が出ることになる。
環境を配慮したマシンの開発をテーマに掲げ、2012年にはマシン内部で充電したエネルギーを、マシンパワーに変えるシステムが導入される。現在のF1でいう「KERS(ブレーキエネルギー回生システム)」の似た装置だ。
※F1のKERSとは、仕組みが全く異なる。
この2012年型マシンについては、5月末にシェイクダウンが予定されており、この後もシーズン中に数回の実走行テストが予定されている。
【今年は、12チーム16人のドライバーが参戦】
その後、ファンも関係者も待っていたチーム・ドライバーのラインナップが発表され、今シーズン参戦する全チームの監督・ドライバーがステージに登壇した。
気になる2011年FNラインアップは以下のとおり。
■TEAM IMPUL
No.1:ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ
No.2:平手晃平
■KONDO RACING
No.2:未定
■Team LeMans
No.7:大嶋和也
■Team KYGNUS SUNOCO
No.8:石浦宏明
■REAL RACING
No.10:小林崇志
■TEAM 無限
No.16:山本尚貴
■SGC by KCMG
No.18:アレクサンドレ・インペラトーリ
■NKAJIMA RACING
No.31:中嶋大祐
No.32:小暮卓史
■Projectμ/cerumo・INGING
No.33:国本雄資
■PETORONAS TEAM TOM'S
No.36:アンドレ・ロッテラー
No.37:中嶋一貴
■DOCOMO TEAM DANDELION RACING
No.40:伊沢拓也
No.41:塚越広大
■Le Beausset Motorsports
No.62:嵯峨宏紀
全チームの監督・ドライバーが集まり、フォトセッションが行われた後、サーキット実況でおなじみのピエール北川さんとフジテレビの宮瀬アナウンサーの司会進行で、トークショー形式のインタビューが行われた。
No.1:J・P・オリベイラ
「今年はカーナンバー1(チャンピオンナンバー)をつける責任を感じている。昨年はトップ6が0.1秒以内で争っているレースが多かったが、今年は新人ドライバーたちも手強そうなので、シビアな戦いになると思う。常にラップタイムモニターの1位の部分に自分の名前があることだけを考えて走るよ。」
No.8:石浦宏明
「スウィフトのマシンも3年目という事で、各チームもマシンの特性は知り尽くしています。そのため、今年はドライバーの精度と予選でしっかり前のポジションにいられるかが重要になってくると思います。昨年は外国人ドライバーが前を走るレースが多かったので、そこを自分が突破していきたいと思います。」
No.16:山本尚貴
「今年は“勝つこと”を目標に頑張っていきます。(具体的に優勝を狙っているコースはありますか?)全部狙っていますが、鈴鹿はSRS-Fでお世話になった場所ですし、地元である(栃木県の)ツインリンクもてぎでは、地元で応援してくれる皆の前で勝ちたいです。」
No.31:小暮卓史
「昨年は最終戦で、本当に悔しい思いをしました。今年はミスなくシーズンを戦ってチャンピオンを獲得したいです。そのためには、流れが悪いときでもポイントをある程度獲得していくこと、そして予選でも安定して前にいるようにしたい。」
No.37:中嶋一貴
「フォーミュラニッポンでは新人ドライバーだけど、“ルーキー”とは思ってもらいたくないし、周りもそう思っていないはず。ルーキーらしからぬ走りをしたい。そして、レースの一番の醍醐味はサーキットに来て、レースを観てもらうことなので、それにつながる走りを魅せたい。」
【今年のFN最大の見どころは“中嶋家の兄弟対決”】
今年は、誰が勝ってもおかしくないほど、大接戦の状態にあるフォーミュラ・ニッポン。その中で話題となっているのが中嶋一貴・大祐の「兄弟対決」だ。
この日のインタビューの中で、あまり触れないようにコメントをしてきた2人だが、宮瀬アナからの「兄弟対決については?」という質問に対しては、それぞれこのように答えた。
兄:中嶋一貴
「こういう形で注目を集めることはチャンスだと思うし、これを機に新しいファンも増えていってほしい。しかし他にも意識しなければいけないドライバーも多いので、あまり“兄弟対決”ということを気にしないで、走りたいと思う。」
弟:中嶋大祐
「兄の言った事と同じになるのですが、兄に勝つだけでは駄目です。16人の中でトップにならないと勝利を掴み取れないので、あまり気にせずにやりたいです。」
とコメント。
壇上で目を合わす機会はほとんどなく、「気にしない」とは言ったものの、少しはお互いを意識しているようだった。
また、各ドライバーのインタビュー前に「JRP会長」として登壇した、2人の父である中嶋悟氏は、「私事ではありますが、今年は“中嶋”と名のつく者が3人もフォーミュラニッポンに登場することになりました。皆様にとっては違和感があるかもしれません。こういう(親子での、兄弟での参戦)時代が来てしまったという事で、少しでも良い戦いをしてもらえればと思います。」と、兄弟対決に関するコメントを求めていたメディア関係者に対し、控え目な回答をした。
「2012年のフォーミュラニッポン海外進出」「6人の新人ドライバー参戦」「中嶋家の兄弟対決」「0.1秒を争う大激戦のシーズン」
今年は、例年以上に見どころが盛りだくさんになっているフォーミュラ・ニッポン。
開幕戦は4月16・17日の鈴鹿サーキットとなる。
普段から、F1やSUPER GTを中心に観戦されているファンも多いかと思うが、今年は是非1度だけでもフォーミュラ・ニッポン観戦のために、サーキットに足を運んでもらいたい。
絶対に、損はしない“熱いバトル”がきっと観られるはずだ。
『記事:吉田 知弘(ビギナー観戦塾)』
『写真:中村写真事務所』