いよいよ今週末に迫った「JAFグランプリ 富士スプリントカップ2010」
その直前企画として観戦塾の「Circuit Diary」で、全7回に渡って、JAFグランプリ2010のレース・イベント紹介。さらに見どころをお伝えしている『JAFGP直前特集』
第1回:概要編
http://www.kansenzyuku.com/circuitdiary/diary.cgi?no=212
第2回:歴史編
http://www.kansenzyuku.com/circuitdiary/diary.cgi?no=213
第3回:スーパーGT編
http://www.kansenzyuku.com/circuitdiary/diary.cgi?no=214
第4回:フォーミュラニッポン編
http://www.kansenzyuku.com/circuitdiary/diary.cgi?no=215
第5回:東西対抗戦編
http://www.kansenzyuku.com/circuitdiary/diary.cgi?no=216
第6回:イベント編
http://www.kansenzyuku.com/circuitdiary/diary.cgi?no=217
最終回の今回は、いよいよ開幕間近に迫ったJAFGP。それぞれのレースの見どころを紹介していこうと思う。
【GT500:もてぎで実現しなかったウイダーHSV vs ENEOS SC430の“頂上決戦”】
ウイダーHSV‐010(#18)がデビュー初年度にチャンピオンに輝いたスーパーGT500クラス。
実質的にウイダーHSVとEBEOS SC430の頂上決戦となったスーパーGT最終戦のもてぎ戦。予選でもフロントローを分け合い、おそらく「2010シーズンの中で、最も熱いバトルが展開される」と関係者もファンも期待して、日曜日の決勝を迎えた。
しかし。
決勝開始前のコースオープンの際、#6のビヨン・ビルドハイムが、ピット出口が開放される前に間違ってコースに入ってしまった。
これにより、レース開始早々に、#6に対して「ペナルティ」のボードが掲示。20秒ストップのペナルティを課せられることになってしまった。
もちろん、ルールではあるため、仕方のない事ではあるし、必ず受け入れなければならない事である。
おそらく両者の心の中にも「ルールだから仕方はない。だけど、“ガチンコで戦い切って勝敗を決したかった”」という気持ちは、強くあったと思う。
両チームにとっても、ドライバーも、そして最終戦を見守ったファンや関係者にとっても、どこか「消化不良」となった最終戦だった。
だからこそ、今回のJAFGPに注目したいと思っている。
なぜならば「あの時に見れなかった“#18vs#6のガチンコ勝負”が富士スプリントカップという形で再度実現する」からだ。
コースやルールは多少異なるが、マシンは全てウェイトハンデなし。性能調整も最終戦版が採用されるため、最終戦とほぼ同じ条件でのバトルが見られる。
最終戦もてぎでは、残念ながら実現しなかった「直接対決での頂上決戦」。今回の富士では“もてぎで実現しなかった分も”、思う存分に戦ってほしい。
【GT300:GT500は気にしなくていい。300クラスが主役となるレースが実現】
いつもは、後ろから迫ってくるGT500のマシンを前に行かせながら、自分達のクラスでバトルをしなければならないGT300クラス。
しかし、今回のJAFGPでは両クラスともに別々でレースをするため、余計にバックミラーを気にする必要はない。
また、性能の関係上、総合的に見てもGT500のマシンが先頭をリードしていく展開になってしまう。そのためGT300クラスは、どうしても“脇役”のような形でみられてしまいがちたが、それも今回のJAFGPでは「主役」としてGT300独自の戦いを、全てのファンに見てもらうチャンスができた。
いつもはGT500に目が行きがちのスーパーGTだが、実はGT500以上にコース上でのバトルが白熱していて、毎回接近戦が繰り広げられているのがGT300だ。
なので、いつもはフォーミュラニッポンやGT500を応援しているファンの方は特に当日は「GT300だから・・・」とスタンドを離れるのではなく、いつもとは違う「GT300だけに集中できるスプリントカップ」に注目してほしい。
【フォーミュラニッポン:レース戦略ではなく“ドライバー力”が求められるスプリント戦】
いつもは「タイヤ交換」という義務がある中で行われているフォーミュラニッポン。通常のコース上でのバトル以外の「レース戦略」「チームスタッフのピット作業」も上手く成功させないと、レースでの勝利が得られないような仕組みになっている。
普段からF1を含め、モータースポーツを見ているファンにとっては「レース展開を左右する面白い要素」として受け入れられている部分も多いかもしれないが、観戦暦が浅いファンにとっては、「展開が分かりにくくなる要素」と思っている人も多かったかもしれない。
しかし、今回のJAFGPでは、タイヤ交換の義務はなく、単純に「22周を一番早く走り切ったドライバーが優勝」というシンプルなものになっている。
レース戦略やチームスタッフによるタイヤ交換作業がなく、さらに使用しているマシンも全員同じとなると、勝敗を分ける大きなポイントになってくるのが「ドライバーの実力」た。
最近のフォーミュラニッポンは、F1のルールも意識してのルール変更が多かった分、久しぶりに「純粋なフォーミュラカーレース」という原点に戻ってのレースが期待できる。
さらに、今回はスーパーGTのファンを中心に、「いつもはフォーミュラニッポンを見ない」というファンも多く来場する。
スーパーGTには絶対にない、迫力と速さを持っているフォーミュラニッポンのマシン。その凄さを体感してほしい。
【SAVEOYAMA:ドライバー全員の気持ちは“レースで小山町に恩返しをしたい”】
今回の舞台、富士スピードウェイがある静岡県の小山町は、9月に上陸した台風9号の影響で、甚大な被害を受けた。
その影響により、スーパーGT第7戦の富士300kmレースは中止となった。皆さんの記憶にも新しいと思う。
レース中止の決定を受け、GT300クラスに参戦する片岡龍也選手を中心に、ドライバーが全国各地でチャリティーイベントを企画。「SAVE OYAMA SUPER GT Drivers AID」を結成。たくさんの義援金が小山町に今も届けられている。
レース中止と同時に「いつもお世話になっている小山町のために何かしたい」その思いだけを胸に、スーパーGTだけでなく、国内レースに携わる多くの関係者が一致団結して、小山町と富士スピードウェイの復興のために尽力してきた。
そして、台風の被害から2ヶ月。災害後としては初めて国内最高峰クラスのレースイベントが富士スピードウェイで始まる。
今回はシリーズ戦とは違うルール面で、同レースをするか?というところがクローズアップされ、各ドライバー・チーム共に対策を練っている状態。
でも、それぞれのドライバーは口にしないけど、心の中に強く思っていること。
それは、
『今も復興のために努力している小山町に、“レース”という形で元気をあげたい、勇気をあげたい』
おそらく、そう思ってレースに挑むドライバーが多いと思う。
今週末の富士スピードウェイでは、そんなドライバーたち、そして地元の御山町の人たちに温かい、惜しみない声援を送ってあげてほしい。
いよいよ、明日に迫った「JAFGP 富士スプリントカップ2010」
今週末は、地球の裏側でF1も最終戦を迎え、そして国内のトップレースもJAFGPが実質的な最終戦となる。
観戦に行かれる皆さんにとって、2010年の思い出に残る週末のレースになる事を祈りたい。
『記事:吉田 知弘(ビギナー観戦塾)』