開幕まで1ヶ月を切った2014年のSUPER GT。今シーズンからGT500クラスはDTM(ドイツツーリングカー選手権)と車両規則を統一。新規則に合わせてレクサスはRC F、ホンダはNSX CONCEPT-GT、日産はGT-Rが完成。先日行われた鈴鹿サーキット モータースポーツファン感謝デーでも3台揃ってデモ走行を行った。
今回の新規則により、全メーカーが同じモノコック(マシンの基本骨格)を使用することになったが、それにより一つ問題が生じることになった。
このモノコックはDTMとも共通なのだが、昨年までのGT500と比べて両サイドの空いている部分が狭くなっている。これにより、実際にボディカウルを付けてドアを開けると、ドライバーが乗り降りするためのスペースが昨年と比べて非常に限られることになった。
横方向からのクラッシュでもドライバーの安全を守れるような構造になっているとのこと。DTMの場合はドライバー交代がないため、特に問題はなかったがドライバー交代が必要なSUPER GTでは、順位を大きく左右するピット作業時間内に交代も完了しなければならない。これまでは20秒弱でシートベルト装着も含めて完了していた交代作業だが、新モノコックでは少なくとも40秒かかってしまうと言われている。この40秒は現在のGT500クラスでの総ピット作業時間でもあるため、少しでもドライバー交代でミスが出れば、その分がロスタイムとなりピットアウト後の順位にも大きく影響してしまう。
狭い出入り口でどうやって素早く交代を済ませるかで各メーカー・チームが頭を悩ませている。
3月1・2日に行われた鈴鹿ファン感でのデモ走行でも、昨年までと比べて各ドライバーとも乗り込みに苦労している様子。立川(レクサス)今まで通りの手順で乗り込み、松田(日産)は片足ずつ。まだこれといった乗り込み方は決まっていない様子だったが、昨年と比べると明らかに入りづらそうで、苦労している姿が見受けられた。
これに対し、小暮はモノコックのサイド部分に立ち上がった状態で足から順に入っていく方法をトライ。ホンダ陣営が全て乗り込み方法を統一しているのかは定かではないが、各陣営ともに1秒でも削るための試行錯誤が開幕まで行われそうだ。
ドライバーの乗り込み方以外にもマシンに工夫を施しているメーカーもあった。それが日産GT-Rだ。RC FとNSXが従来通りの角度までしかドアが開かないのに対し、今季から登場する新型のGT-Rは、90℃近くまで開く仕様になっていた。これが実際にドライバー交代をスムーズにするための設計なのか定かではないが、少なからずドライバーが中へ入り込んでいくためのスペースが広くなることはなく、大きく開くことで外からコックピット内へ覗きこんでの作業もらくになるだろう。その分、ドアが開くスペースが大きくなってしまい、タイヤ交換など他の作業に支障が出る可能性もあるため、メリットばかりではないようだ。
今シーズンは、マシンの変更によりピット作業など細かい部分でも工夫や修正が必要なGT500クラス。今週末に行われる岡山公式合同テストや23・24日の富士メーカー合同テストでもピット作業のシミュレーションを行うチームが確実にあるだろう。現地に行く予定がある方は、是非ドライバー交代のやり方などをチェックしておくと、4月の開幕戦をより興味深く観戦することができるかもしれない。
『記事:吉田 知弘』
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