2日間合わせて80,100人が来場した2013年SUPER GT第2戦富士。GT500はポールポジションからスタートしたPETRONAS TOM’S SC430(中嶋一貴/ジェームス・ロシター)が終始安定した速さを発揮して優勝。チームとしては2010年最終戦もてぎ以来およそ2年半ぶり、ジェームス・ロシターは参戦2戦目でGT初勝利。エースの中嶋一貴はGT500参戦3年目にして待望の初優勝となった。
中盤の第2スティントこそ戦略の違うDENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)に先行を許したものの、最終第3スティントでは逆転。最後はベテラン立川祐路との一騎打ちになり、0.9秒後方まで迫られたものの、ミスのない走りで見事に逃げ切った。もちろん、最後まできっちりタイヤマネジメントと燃費の管理を行った一貴の走りが光ったが、この快走劇を影で支えたのが名門トムスチームのメカニックだった。
【ピットストップで稼いだ“4秒のリード”】
68周目にトップを走る脇阪がピットイン。残り周回を考えると給油が長くなり46.6秒もの時間がかかってしまう。これでトップ争いはロシターと平手による一騎打ちに。これまでル・マンやWECなどクラスの異なるマシンによる混走レース経験が豊富なロシターだったが、タイミングがうまく合わずGT300車両に引っかかってしまう。この間に平手が追い上げ、両者の差はほとんどないまま78周を終えたところで同時にピットイン。残り周回も同じで給油時間も変わらない。理論上なら作業時間に大きな差は生まれないのだが、ここでトムスのメカニックが底力を見せ、34.0秒という早業で36号車をコースへ送り出す。一方の38号車セルモは少し時間がかかり38秒の作業時間でピットアウト。たった4秒ではあるが、この差は勝敗に大きく左右した。
ロシターからバトンを受け取り、先にコースに戻った一貴は後方から追い上げてきていたENEOS SUSTINA SC430(大嶋和也)の前で1コーナーを通過。トップ死守に成功した。この4秒後にピットアウトした立川は大嶋の先行を許し3位。その後すぐに2位の座を取り戻し、トップ奪還に向けて猛追を開始するが、4秒にプラスして大嶋の攻略も重なり、タイヤに相当の負担をかけてしまう。最後は0.9秒後方まで迫ったがタイヤの消耗が早まり万事休す。500kmものロングレースの勝敗が決した瞬間だった。
【“完璧な週末だった”レクサス勢がトップ4を独占】
レース後の記者会見に出席した一貴は「チームも最高のクルマを用意してくれて、タイヤも最高だったし、場面に応じたチョイスも間違っていなかった。一言で言うと完璧な週末で、このような環境を用意してくれたチームとブリヂストンタイヤに感謝したいです。」と真っ先にコメント。
開幕戦岡山ではホンダ、日産勢から遅れを取り、レクサスでは38号車の4位が最高という結果。今回は陣営にとってもホームコースの富士スピードウェイ。開幕前から何度もテストで走り込み行った。それが功を奏し、終わってみればレクサス勢が表彰台を独占。4位にも39号車が入りトップ4を独占するという圧倒的な勝利を掴んだ。36号車トムスは、この優勝で20ポイントに伸ばしランキング3位に浮上。38号車の23ポイントで2位に浮上し、シーズン中盤戦に向けて存在感を見せつけるレースとなった。
【“強力な助っ人”ジェームス・ロシター、早速GT初勝利】
これまでF1のテストドライバー経験をはじめ、ヨーロッパの各カテゴリーに参戦経験のあるジェームス・ロシターが今年から日本でのレース活動を開始。SUPER GTでは早速2戦目にして初優勝を手にした。「とても嬉しい。勝つために日本に来ることを決めたけど、今回ちゃんと結果を出せて本当に良かった。特に個人的は久しく優勝できていなかったから、今回の優勝は大きな意味を持っているよ。2日間通してレクサス勢は完璧な走りを見せていたから、今後も楽しみだね。」とコメント。
しかし、500kmでもスプリント戦のようになるGT500クラスの展開には慣れてない様子で、最後の一貴と立川のバトルをピットで見守っていた際には「とにかく心配で、一貴に代わって自分がドライブしたいくらいだったよ。本当に落ち着かない終盤戦だった。でも一貴ならきっと最後までやり切ってくれると信じていたよ。」とレース終盤戦の心境を笑顔で振り返っていた。
次回の第3戦セパンは、2人とも両立して参戦しているWEC第3戦ル・マン24時間耐久レースの開催前週。その直前にもヨーロッパでテスト走行のスケジュールが組まれており、ハードスケジュールの中での第3戦を迎えることになる。次回のレースについては2人揃って「きっと時差ボケの中でレースに挑むことになるかもしれないけど、スポンサーであるペトロナスのホームだしチャンピオン争いでも重要な1戦なので、また良い結果が出せるよう頑張りたい」と意気込んでいた。
次回は46kgのウェイトハンデを積んでのレースになるため、厳しい戦いが予想される36号車だが、今シーズンのチャンピオン候補の一角として、今後も目が離せない。
『記事:吉田 知弘』
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