【F1】2013オーストラリアGP〜Point of the Race〜:先を見据えた走りに徹底したライコネン

©Pirelli
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 2013年のF1世界選手権がいよいよ開幕。今年も開幕戦は南半球のオーストラリア・メルボルン市内のアルバートパーク・サーキットで行われ、7番手スタートのキミ・ライコネン(ロータス)が逆転。通算20勝目を飾った。16日(土)の公式予選は大雨により決勝日朝に順延するなど波乱があったが、今季の開幕戦にしては十分すぎるほど見どころ盛りだくさんのレース。今回の勝敗を分けた「ポイント」は、スーパーソフトからミディアムに履き替えたレース中盤の「第2スティント」だった。

【目の前の順位か?40周先の順位か?】
 5番手スタートのフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)と同じ9周目でピットに入ると長持ちしないスーパーソフトからミディアムタイヤに交換。レース中盤の第2スティントに突入していく。この中盤のレース運びの違いが、今回の勝敗に大きく左右することになった。

 この時点でアロンソの直接的ライバルはスタートから首位争いしてきたPPスタートのセバスチャン・ベッテル(レッドブル)。同僚のフェリペ・マッサとともにピッタリ背後につけて逆転するチャンスを伺った。そしてベッテルがトップを走るエイドリアン・スーティル(フォースインディア)に引っかかり、2度目のピットストップを考え始めていた20周目、先にアロンソが動いて2度目のタイヤ交換を敢行。ピットアウト直後に思い切り飛ばして翌21周目にベッテルがピットインする間に逆転。これで当面の目標だった「ベッテル攻略」を達成した。しかし、敵は他にもいたのだ。

 アロンソやベッテルらがトップ争いに集中している中、淡々と1分33秒台の安定したペースで5番手を走行していたライコネンが、ここで本領を発揮する。ライバル達が3ストップ作戦を選ぶ中、タイヤに負担がかかりやすい2ストップ作戦を選択。しかも1回目のタイヤ交換はアロンソ(3ストップ)と同じ9周目。単純に考えてもミディアムで25周×2セットを走りきらなくてはいけない。もちろん普通に考えると無理に近いのだが、ライコネンは目の前の順位争いをするのではなく“40周先に自分がいるであろう順位”を見据えた上で今必要なペースで周回を重ねていた。23周目にトップに立って以降も無理なペースアップをせずに走行。一方のアロンソはニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)やルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)といった他の2ストップ陣営に行く手を阻まれ、なかなかライコネンに近づくことが出来ない。さらに目の前の順位争いが激化し、その都度タイヤの消耗を早めてしまう走りを強いられてしまった。

 この間にもライコネンは先を見据えた走りを確実にこなしていき、難しいと思われていた25周のロングスティント危なげなく完遂。最終第3スティントも無理なプッシュをせず確実に走った。アロンソも3回目のタイヤ交換を終えて猛プッシュしたが、最終的に追いつくことが出来ずライコネンが2013年最初のウィナーに輝いた。

【F1復帰後2勝目“今まで一番楽なレースのひとつだった”】
 2年のブランクを経て昨年F1復帰を果たしたライコネン。第18戦アブダビGPで優勝を飾った時は序盤にハミルトン(当時マクラーレン)のリタイヤでトップに浮上。そこから逃げ続ける展開だったが、今回は後方から自分たちのレースに徹し、最終的に逆転してのトップチェッカー。そして何より、前回アブダビGPは宗教の関係上、表彰式ではシャンパンではなくローズウォーターが出されたが、今回は正真正銘のシャンパン。誰にもかけることなく、ひたすら一気飲みするところは彼らしかった。

 今回のレースを振り返り「スタート直後はいくつかバトルがあったけど、途中からはシンプルなレース。僕のキャリアの中で最も楽に勝てたレースの一つだった」とコメント。実は彼が開幕戦で優勝を飾ったのはチャンピオンを獲った2007年以来2度目。こうなると“2度目のチャンピオン獲得”に向けてファンの皆様も期待が高まるところ。

©Pirelli
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「今年のライコネンは、何かやってくれそうだ」

そんな期待を抱かせてくれるような開幕戦での走りだった。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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